阿曾郷(読み)あぞごう

日本歴史地名大系 「阿曾郷」の解説

阿曾郷
あぞごう

古代の賀陽郡阿曾郷(和名抄)の郷名を継いだものか。足守あしもり川右岸、血吸ちすい川流域の東阿曾・西阿曾を遺称地とし、一帯に推定される。阿宗とも記された。古くより鋳物業が発達した地で、康永元年(一三四二)の「備前一宮社法」によると、「あぞのかな屋村」の商衆・鋳物師衆は商物を初穂として吉備津彦神社に進上するほか、駒足と称した馬の数役、男役と称した荷役を勤め、備前国内での商売に対する公事を免除されていた。とくに鋳物師衆は踏鞴役・釜役として春秋牛鍬の篦と先、五徳、合せて大小三三、ほかに日供釜として羽釜二を毎年に進上した。また大永六年(一五二六)の吉備津神社の坪付注文によると、五升鍋を毎年進上していた。


阿曾郷
あぞごう

和名抄」高山寺本は「安曾」と読み、東急本は「阿宗」と記して「安曾」と読む。天平一一年(七三九)備中国大税負死亡人帳(正倉院文書)に「阿蘇郷」とあり、宗部里の戸西漢人部麻呂が二〇束、戸羅曳連豊嶋が七〇束、磐原里戸主史戸阿遅麻佐の戸口西漢人部事无売が一〇束の大税を借りて死亡したと記す。平城宮跡出土木簡に「(表)備中国賀夜郡阿宗里白米五」「(裏)年 天平十九年二月九日」がある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の阿曾郷の言及

【備中国】より

…吉岡銅山は日本有数の銅山として知られ,山間部では紙生産が盛んで,鎌倉末期ごろから〈備中檀紙(だんし)〉の名が高かった。吉備津宮(神社)の神領阿曾郷(現,総社市西阿曾)の鋳物師(いもじ)は,吉備津宮の釜や梵鐘の鋳造に奉仕したが,その優秀な技術から〈備中鍬〉をも生産した。浅口郡を中心とする沿岸部では,古代以来,塩が生産されたが,備前児島や小豆島の製塩にはとうてい及ばない。…

※「阿曾郷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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