吉備津彦神社(読み)きびつひこじんじゃ

精選版 日本国語大辞典 「吉備津彦神社」の意味・読み・例文・類語

きびつひこ‐じんじゃ【吉備津彦神社】

岡山市一宮にある神社。旧国幣小社。祭神は大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)ほか。備前国吉備国から分置したとき、備中国吉備津神社を勧請(かんじょう)したものと伝えられる。平安時代から宮中・武家の崇敬を受け、江戸時代に藩主池田氏により社殿の造営が行なわれた。備前国一の宮。吉備津宮

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日本歴史地名大系 「吉備津彦神社」の解説

吉備津彦神社
きびつひこじんじや

[現在地名]岡山市一宮

吉備の中山の東麓にあり、主祭神は大吉備津彦命、ほかに吉備津武彦命など一族の神を配祀する。備前国一宮とされ、旧国幣小社。約一キロを隔てた吉備の中山の西麓には備中一宮の吉備津神社がある。吉備の中山は備前・備中の境に位置し、古くから歌枕として知られ(→吉備の中山、当社背後にあたる最高峰の竜王りゆうおう(一七〇メートル)には摂社りゆう神社がある。

当社創建の時期は明らかではなく、「延喜式」神名帳でも記載を欠くが、境内北部の神宮寺跡と伝承される地域からは白鳳様式の瓦が、南方の神力じんりき寺跡からは白鳳―奈良時代の瓦が出土し、当地には古代の寺院が建っていたと思われる。しかしこれらの寺院と当神社が併存していたかどうかは定かでない。神社に伝わる旧記(吉備津彦神社文書、以下断りのない限り同文書)などでは、平安時代には歴代国司の崇敬を受けたとされ、貞観(八五九―八七七)頃国司藤原保則は吉備の中山の吉備津彦の神を崇敬、干天には龍神社に参ってお陰を得たと伝える。神主職は平安時代すでに大守氏の世襲するところであった。大守氏はもとは田使首から出た難波氏で藤原を名乗り、平安末期、藤原隆盛のときに高倉天皇に仕えて大内舎人になったことから大藤内(「吾妻鏡」では王藤内)とよばれるようになったという(「大守氏系譜」など)

平安時代末、永万元年(一一六五)六月日の神祇官諸社年貢注文(永万文書)に「備前国 吉備津宮」とみえ、神祇伯家(白川家)の把握下にあって年貢の一部を上進していた。備前国は平家の知行国であったため、神主の大藤内は源平合戦において平家に味方し、平家滅亡とともに囚人として鎌倉に召換されている。源頼朝の権臣工藤祐経を頼って頼朝に陳謝し、神領の回復を訴え、目的を果した。

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改訂新版 世界大百科事典 「吉備津彦神社」の意味・わかりやすい解説

吉備津彦神社 (きびつひこじんじゃ)

岡山市北区一宮にある神社。備前国の一宮,もと国幣小社。祭神は,備中の吉備津神社と同じく,吉備氏の氏神の大吉備津彦(おおきびつひこ)命で,その分社と推定される。吉備の中山の東麓に鎮座し,古代から備前第一の大社として崇信を集めた。俊乗房重源(ちようげん)が東大寺大勧進として備前を管領したとき当社の境内に常行堂を建立したことが,近年出土の古瓦で確認されている。近世,岡山藩主池田氏の保護厚く,社領高300石,1697年(元禄10)には池田綱政が社殿を再建した。1930年火災にあったが,本殿のみは難をまぬかれた。なお,8月2日と3日の御田植祭は,中世から続き,県指定重要無形民俗文化財である。
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百科事典マイペディア 「吉備津彦神社」の意味・わかりやすい解説

吉備津彦神社【きびつひこじんじゃ】

岡山県岡山市一宮に鎮座。旧国幣小社。大吉備津彦命をまつる。吉備津神社の分祀で,備前国の一宮と称される。例祭10月23日
→関連項目一宮岡山[市]北[区]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉備津彦神社」の意味・わかりやすい解説

吉備津彦神社
きびつひこじんじゃ

岡山市北区一宮(いちのみや)に鎮座。主神は大吉備津彦命(みこと)。吉備国が分国されたとき、備前国の一宮として創祀(そうし)された。平安時代、代々の国司の崇敬厚く、1276年(建治2)院宣によって遷宮が行われ、足利義満(あしかがよしみつ)により神宮寺本尊が奉祀された記録がある。旧国幣小社。社殿は中世以来たびたび造営がなされ、本殿以下51宇を具備していたが、1930年(昭和5)火災によって主要な社殿を焼亡し、その後復興された。例祭日は10月第3土・日曜日。御田植祭(8月2日、3日)などの特殊神事がある。

[吉井貞俊]


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デジタル大辞泉プラス 「吉備津彦神社」の解説

吉備津彦神社

岡山県岡山市北区、吉備の中山の東麓に位置する神社。主祭神は大吉備津彦命。創建年代不詳。旧国幣小社。夏至の日の出が鳥居の正面から神殿の御鏡に入ることから「朝日の宮」とも呼ばれる。8月の御田植祭は県指定重要無形民俗文化財。

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