日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿波煙草」の意味・わかりやすい解説
阿波煙草
あわたばこ
江戸時代、阿波(徳島県)地方の特産品。阿波刻(きざ)みといわれて火付きの良好なことで人気を博した。江戸時代中ごろ吉野川中流域の山間部で栽培が盛んになり、とくに寛政(かんせい)期(1769~1801)の祖谷(いや)山地方でお夏という婦人が栽培方法に改良を加え、「お夏煙草」として上方(かみがた)で評判を得た。その後、三好(みよし)郡の池田や辻(つじ)の在郷町が集荷された葉タバコの加工地となり、その販路も大坂、讃岐(さぬき)から北前船によって北海道にまで及び、現金収入の少ない山間農民の重要な換金作物となった。明治維新のころには加工業者と販売業者がそれぞれ池田と辻に20軒ほど集中していた。1898年(明治31)のたばこ専売制度によって、たばこ業界は一変したが、栽培は増加し、1900年(明治33)の作付面積は約2000町歩、1924年(大正13)には約2400町歩が記録されている。
[三好昭一郎]