陸橋(地学)(読み)りくきょう(英語表記)land bridge

翻訳|land bridge

日本大百科全書(ニッポニカ) 「陸橋(地学)」の意味・わかりやすい解説

陸橋(地学)
りくきょう
land bridge

異なる陸域の間が、海水面低下や地殻変動によって陸続きとなり、生物が移動できる状態になった地域。現在の南北アメリカ大陸をつなぐパナマ地峡などが知られる。新生代更新世(洪積世)の、約164万年~1万年前に南北アメリカ大陸が陸橋で接続し、北アメリカのウマ、シカ類が南アメリカに広がり、南米独特の哺乳(ほにゅう)類の多くが絶滅した。現在は海峡で隔てられているアジアと北アメリカ大陸間にはベーリング陸橋があったため、アジアで栄えたゾウ、クマ、トナカイ類が北アメリカにみられ、アジアにも北米に多いオオカミ、ラクダなどがみられる。新生代中新世後期から鮮新世末期の約1000万年~200万年前にはアジアからゾウや食肉類が、また北米からはウマがそれぞれ反対側の大陸に移った。ほかにトランス・アトランティック陸橋、レムリア陸橋、朝鮮陸橋、宗谷陸橋(そうやりくきょう)、津軽陸橋などが著名。遠く離れた大陸や島間の過去の生物分布を陸橋により説明する立場を陸橋説という。1960年代以後は過去の生物分布をプレートテクトニクスで説明する場合が多い。

[小畠郁生]

『木元新作著『島の生物学――動物の地理的分布と集団現象』(1998・東海大学出版会)』『小畠郁生・加藤秀著『ひきさかれた大陸』(偕成社文庫)』

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