地質時代区分の一つ。更新世(最新世ともいう)Pleistoceneと同義である。新生代は,哺乳類時代と呼ばれ,第三紀と第四紀に区分されるが,両紀の境界は,人類および現在型の哺乳類が現れ,温暖な気候が寒冷化して氷河が発達し始めた時期においており,第四紀は,人類時代とも氷河時代とも呼ばれる。時代区分の基準は,第18回国際地質学会議(1948,ロンドン)で設定された。
第四紀は,さらに,洪積世(更新世)と沖積世(完新世)に区分され,地球の歴史の現代に当たる沖積世より以前の,200万~1万年前が洪積世である。
洪積世の初期には,自然も人類も第四紀的要素が芽生えたとはいえ,それ以前の第三紀的要素が残存していたが,その途中(70万年前)から後半にかけて,急速に現在的要素をもつに至った。人類についてみれば,礫器(れつき)を使用した猿人が初期に現れ,原人,旧人を経て,末期に新人が現れた。ただし,現代人につながる新人もまだ旧石器を使用していた時代である。哺乳類では,第三紀の三趾馬(ヒッパリオン)にかわって現生の馬が現れ,ゾウも,第三紀のマストドンからステゴドンを経て現在のゾウ(エレファス)が現れた。植物界においては,温暖な第三紀型の植物群(メタセコイア植物群)の中に,寒冷地生の植物(ミツガシワやヒメバラモミなど)が移入し,やがてメタセコイア植物群が消滅するに至るが,その後に,気候が完全に寒冷化して氷河が広く地球をおおう氷期と,やや温暖化する間氷期とが交互する氷河時代へと移行した。
このように,第三紀型の生物が残存する洪積世前期を,先氷河時代と呼ぶこともあり,地磁気が逆転していた時期(松山逆磁極期)でもある。
氷期と間氷期が激しく繰り返した洪積世中期以降は,それにつれて海水面も変動し,日本列島のような島と大陸間,あるいは大陸どうしの間に,そのつど陸橋・海峡が形成されて,人類や生物が移動しまたは隔離され,生物分布に大きな影響を与えた。
ヨーロッパや北アメリカでは,平地にも広く氷河が発達し,氷河の運んだ礫が堆積しているので,19世紀には,この礫を大雨期の洪水によるものと考えて,その時期を洪積世と名付けたのである。
日本では,日高山脈や日本アルプスの高山以外に氷河は発達せず,海水面変化の影響を受けて形成された段丘上に火山灰が重なってローム層(赤土層)となっている。
→地質時代
執筆者:郷原 保真
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…新生代の第三紀の後につづく紀で,地質時代の最後の紀である。第四紀はさらに氷河時代の更新世(洪積世)と後氷期の完新世(沖積世)に区分され,全体が約200万年前から現在までを含む時代である。なお,慣用的に〈だいよんき〉と読まれるが,正しくは〈だいしき〉と読む。…
※「洪積世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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