日本映画。1933年(昭和8)作品。島津保次郎(しまづやすじろう)原作・脚本・監督。トーキー初期の代表作。島津の活躍した松竹は関東大震災後、蒲田(かまた)調といわれる小市民映画をつくりだし、サラリーマンの日常生活を活写した現代劇として一つのジャンルを定着させた。本作はその代表的な作品の一つ。東京の郊外のサラリーマンの核家族を舞台として、女学生や大学生たちを中心に、一家の日々の生活や周囲の人たちとの交友関係を淡々とスケッチ風に、ユーモラスに描いた。ドラマティックなエピソードや強調された映像はいっさいない、こうした小市民映画は観客に親しみを与え、広く楽しまれた。島津の巧みな画面展開はサイレント時代から定評があり、本作も演技指導の的確さや、若い俳優の新鮮な演技を含めて、古さを感じさせない魅力をもっている。
[千葉伸夫]
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