電子化合物(読み)でんしかごうぶつ(その他表記)electron compound

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電子化合物」の意味・わかりやすい解説

電子化合物
でんしかごうぶつ
electron compound

1926年にイギリスの物理学者 W.ヒューム=ロザリは,原子価 a の金属M と原子価 b の金属N との金属間化合物 MxNy について,整数比 xyいかんにかかわらず,全体の価電子総数 axby と原子総数 xy との比値 R が同じならば同型の結晶構造をとるものがあることを見出し,これを電子化合物と名づけた。たとえば1価の銅と2価の亜鉛の化合物 CuZn (黄銅の β 相) では,R=(1+2)/(1+1)=3/2 。これに対し銅と3価のアルミニウムは Cu3Al をつくるが,その R=(3+3)/(1+3)=3/2 。また銅と4価のスズのβ相化合物 Cu5Sn も同様に R=3/2 。そしてこれらはすべて同じ体心立方格子で,性質も類似している。これらを 3/2 電子化合物という。このほか 7/4 電子化合物,21/13 電子化合物も見出されている。ただし価電子総数の計算に VIII族元素 (鉄,コバルトなど) は価電子数0とする。たとえば,FeAl は 3/2 電子化合物である。

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世界大百科事典(旧版)内の電子化合物の言及

【金属間化合物】より

…このため無機物の固体結晶のうちどこまでを金属間化合物と呼べばよいかについては必ずしも明らかでなく,結合様式,結晶構造などもきわめて多種多様である。一般に,原子価効果化合物,原子半径効果化合物,電子化合物,の三つに大別される。(1)原子価効果化合物normal valency compound 電気化学的化合物electrochemical compoundとも呼ばれ,通常の原子価の法則を満足しているもので,比較的単純な結晶形をとり,固溶範囲は狭い。…

※「電子化合物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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