電子温風暖房機(読み)でんしおんぷうだんぼうき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子温風暖房機」の意味・わかりやすい解説

電子温風暖房機
でんしおんぷうだんぼうき

ヒーターに電子(半導体)ヒーターを使い、ファンモーターで周りの空気を吸い込み、ヒーターを通過するときに熱交換をし、温風として吹き出す対流式温風暖房機。電子ヒーターはチタン酸バリウム系セラミックスで、正の抵抗温度係数をもつ抵抗体(PTCヒーターという)である。PTCヒーターは、温度が特定の値(キュリー温度)以上になると、電気抵抗が急激に増大することになり、ヒーター自身が温度を自己制御する特性をもっている。普通この温度は、ニクロム線に比べてきわめて低い温度(200℃前後)に設定されている。発熱量ワット)は、貫流空気量によって大きく変化する。

 ファンモーターの故障転倒などで空気吸込口や温風吹出口がふさがれたり、また布などで覆われたりして、発熱部を通過する空気量が異常に減少した場合、発熱量も低下しキュリー温度(200℃前後)を保ち過熱することがなく、ニクロム線に比べて安全性が高い。熱交換効率を上げるために、形状もハニカム状またはハーモニカ状になっていて、貫流空気との接触面積を大きくしてあり、小型のわりに大きな熱量(ワット)を発生する。したがって消費電力800ワット~1.5キロワットのタイプでも、600ワットクラスの電気ストーブほどの大きさで、簡単に持ち運びができるとともに、個人の暖房用として、机の下などの狭い場所でも使用されている。またPTCヒーターは、温度の自己制御作用によって吸込空気温度による吹出空気温度への影響が少なく、室内温度が高い場合、発熱量(ワット)が減少し、必要以上の電力を消費しないようになっている。なお、加湿器と併用すれば、室内も乾燥せずに暖房できる。

須田 洋]

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