頭部外傷後遺症
とうぶがいしょうこういしょう
Sequelae of head injury
(外傷)
現在の医療では、損傷した脳細胞は再生しないため、損傷部位の脳細胞が行っていた機能が失われると後遺症が残ります。
局所の脳組織の挫滅(脳挫傷(のうざしょう))では、受傷部位から後遺症の予測が可能です(図3)。
片側の前頭葉や側頭葉の前から数㎝までの範囲は、比較的後遺症を起こしにくい場所です。前頭葉のいちばん後ろには手足を動かす運動中枢があり、侵された側と反対側の半身の麻痺(片麻痺)を来します。前頭葉の後ろには頭頂葉があり、頭頂葉のいちばん前には手足の感覚(体知覚)の中枢があります。体知覚中枢は運動中枢と接して存在するため、通常は運動麻痺と感覚障害の両方が認められます。そのほか、言語障害は一般に左の脳の障害で起こりやすいとされています。
広範囲の損傷や、脳の深部の損傷では意識障害が後遺症として残ります。重症の場合には、開眼はしていても意思の疎通ができず、運動や言語も損なわれた遷延性意識障害(いわゆる植物状態)になります。生命維持中枢(脳幹)の機能は保たれているので、呼吸や心臓機能に障害は認められず、脳死とはまったく異なります。
並木 淳
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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家庭医学館
「頭部外傷後遺症」の解説
とうぶがいしょうこういしょう【頭部外傷後遺症】
頭部外傷(「頭部外傷」)は、なんの症状も残さずに治ることもありますが、さまざまな症状が残ってしまうこともまれではありません。けがをして3週間以上たっても残る症状や新しく出てきた症状を、一般に頭部外傷後遺症といいます。
脳に傷を残すような頭部外傷では、てんかん発作(ほっさ)が後遺症となることがあり、外傷性てんかんといいます。外傷性てんかんの多くは2年以内に発作がおこるので、この期間、予防的に抗けいれん薬の服用が必要になることがあります。
ほかには、植物状態などの意識障害、片(へん)まひや視力障害などの脳神経まひ、精神症状、鼻や耳から髄液(ずいえき)のもれる髄液漏(ずいえきろう)などがあります。長期にわたって、頭痛、めまい、いらいら、不安感などを訴えるのに、診察や検査では異常が見当たらず、後遺症かどうかの判断がむずかしいこともあります。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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