駿牛絵詞(読み)すんぎゅうえことば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「駿牛絵詞」の意味・わかりやすい解説

駿牛絵詞
すんぎゅうえことば

牛の図を描き集めた鎌倉時代の絵巻。もと一巻(十図)であったが、現在は一図ごとに切断され諸家に分蔵、東京国立博物館、東京・五島(ごとう)美術館、大阪・藤田美術館など八図の存在が知られている。いずれも重量感ある体躯(たいく)の表現と、顔の写実的描写に優れている。牛は貴族の乗り物(牛車(ぎっしゃ))に欠かせぬ存在で、古くから尊重され、鎌倉時代には古今の名牛について記述し、絵を添えた『駿牛絵詞』(詞(ことば)のみ『群書類従』に収載)がつくられた。またこの時代の写実主義風潮から生まれた似絵(にせえ)(肖像画)は、人物のみならず、牛馬の個性的表現にまで観察の目が向けられ、動物の似絵が描かれる。こうした牛に対する関心の高まりと、似絵の発展とが結び付いて、この種の絵巻が登場したとみられるが、本絵巻と『群書類従』所載のものとの関係は明らかでない。

[村重 寧]

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