改訂新版 世界大百科事典 「麻立干」の意味・わかりやすい解説
麻立干 (まりつかん)
朝鮮古代の新羅の王号。新羅の王号には居西干,次次雄,尼師今(にしきん),麻立干の4種がある。麻立干は,《三国遺事》では17代奈勿(なもつ)王(在位356-402)から第22代智証王(在位500-514)まで,《三国史記》では第19代訥祇(とつぎ)王(在位417-458)からはじまり,王の称号は503年から使用したという。《秦書》には382年に新羅王楼寒(麻立干)の名がみえる。麻立干は尼師今と同様王の俗称で,新羅全期を通じて使用されたとみられる。麻立干の原義には,宗・夫などの尊称的な人名尾称とする説や,高句麗最高官職名の莫離支とする説などがある。8世紀の新羅の学者金大問の説では,〈麻立とは方言の橛(mal)で,橛は橛標をいう。位の順序において,王橛を主とし,臣橛を下にするので,このように名付けた〉として,会同の際の座標に由来すると解している。このことから麻立干は古代祭政の司祭者の称号で,貴族会議(和白)の首席にいる古代王者と推測される。
執筆者:井上 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報