新羅史を中心とした古代朝鮮の私撰の歴史書。高麗の高僧一然(1206-89)が,1280年代に編纂し,弟子の無極が補筆。5巻9編からなり,第1巻は王暦・紀異,第2巻は紀異,第3巻は興法・塔像,第4巻は義解,第5巻は神呪・感通・避隠・孝善の諸編。第1巻,第2巻は年表,新羅通史,諸国の個別の歴史記事。第3巻以降は仏教史関係の記事で,その構成は梁・唐両高僧伝の影響をうけながらも,朝鮮仏教史の特徴を生かしている。王暦や第2巻の《駕洛(から)国記》の抄録などは他に類例のない史料である。紀異の最初の項目に檀君王倹の神話をあげたことは,本書が単に《三国史記》の補遺でなく,元の支配に反対し,民族の自主独立を標榜した歴史書といえる。仏教説話記事には,文芸作品ともみられるものがあり,とくに新羅の郷歌は文学的価値や言語学資料としての価値が高い。版本では正徳本が,活字本では朝鮮史学会本第3版(1973)が最良である。
執筆者:井上 秀雄
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朝鮮の新羅(しらぎ)、高句麗(こうくり)、百済(くだら)三国の遺聞逸事(いぶんいつじ)を記した書籍。高麗(こうらい)時代の高僧一然(いちねん)(1206―89)晩年の著作で、弟子の無極が一部補筆。5巻。巻頭に年表としての王暦を置き、以下、紀異第一、同第二、興法、塔像、義解、神呪(しんじゅ)、感通、避隠、孝善の9編に分かれる。興法編以下はほとんど仏教関係記事である。『三国史記』にみえない、あるいは異なる所伝も多く、朝鮮古代研究の基本史料である。李朝(りちょう)中宗代(1506~44)の慶州刊本が影印されて流布している。
[田中俊明]
『金思燁訳『完訳三国遺事』(1976・朝日新聞社)』▽『三品彰英遺撰『三国遺事考証』上中(1975、79・塙書房)』
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高麗僧の一然(いちねん)が編纂した朝鮮古代史に関する外史。完成は1280年代と推定され,全5巻,9部門からなる。前半の王暦・紀異では朝鮮古代史全般の遺聞・伝説を,後半では僧伝,寺院・仏塔の建立縁起など仏教関係記事を収め,「三国史記」を補う箇所が多い。巻頭の「古朝鮮」は檀君(だんくん)朝鮮の最古の史料であり,ここに朝鮮史の始まりをおいた点は注目される。現存最古の刊本は「三国史記」と並んで刊行された1512年のものであるが,一然以後の割注が混入しており史料批判を要する。
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…名は王倹。高麗時代に編まれた《三国遺事》では,檀君王倹をどの王朝の始祖王ともしないで,朝鮮全土の開国神・始祖神としてとりあげた。この神話の要旨は,帝釈桓因(たいしやくかんいん)の子桓雄が熊女と結婚し,檀君王倹が生まれた。…
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