イカ塩辛の一種。墨袋を加えるため色が黒いのでこの名がある。富山の名産でスルメイカからつくる。寛文(かんぶん)年間(1661~73)冬期の保存食としてつくられだし、元禄(げんろく)時代(1688~1704)に「イカの黒作り」の名がつけられた。前田家では参勤交代の際、将軍家への献上品の一つとしたという。
新鮮なイカの胴を縦に割いて内臓と眼球を取り出し、皮を剥(は)ぎ、薄い短冊形に切る。墨袋はすり鉢でよくすりつぶす。酒樽(さかだる)に材料を入れ12%前後の食塩を加える。墨袋は使用したイカの全部を用いる。肝臓はイカ10杯に対し3~4杯分を使う。樽に漬け込んでから毎日かき回していると2~3週間で熟成する。麹(こうじ)、みりんなどを加えるといっそう味がよくなる。食塩の添加量が少ないため9月から翌年3月までつくられ、夏には製造しない。酒の肴(さかな)、飯の菜などとして喜ばれる。
[金田尚志]
…現在塩辛といえば,イカのそれが一般的で,カツオの塩辛がそれにつづく。イカはふつう細切りの肉と内臓に塩を加えてつくるが,墨を加える場合もあり,これは黒作りと呼ぶ。カツオは肉と内臓でつくるものと内臓だけのものとがあり,かつては前者を〈カツオのたたき〉,後者は酒盗(しゆとう)と呼ばれた。…
※「黒作り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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