黒江湾(読み)くろえわん

日本歴史地名大系 「黒江湾」の解説

黒江湾
くろえわん

和歌浦湾奥部の南にある小さな湾で、日方ひかた川・山田やまだ川などが流入する。近世までは黒牛くろうし潟とよばれており、明治(一八六八―一九一二)以降黒江湾・日方湾とよばれた。北を船尾ふのお山より西に延びる岬、南を藤白ふじしろ山系山地に囲まれた良港で、近世は湾奥を熊野街道が通り、東方には日方川沿いの村々を控えて日方港などが発達した。また中世の熊野街道も湾奥南の鳥居とりい・藤白を通り、その景色の美しいことでも知られていた。

近世には日方浦を中心に黒江漆器や付近の特産物の積出港、廻船の寄航地として船の出入りが多かったが、日方川・山田川などの河川堆積によって干潟が形成され、延宝年間(一六七三―八一)以降には河内農民による河内浜かわちはま新田をはじめ、町人請負によるきよう浜・有田屋ありだや浜の開発が進められた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の黒江湾の言及

【海南[市]】より

…人口4万7195(1995)。海南湾(黒江湾)に臨み,日方川および貴志川の流域(野上谷)を後背地に,近世以来商港として繁栄し,廻船問屋も多かった。特産品は黒江の漆器,野上谷のシュロ製品が主で,特に漆器は根来塗に起源をもち,紀州藩の保護のもとに最も重要な産業であった。…

※「黒江湾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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