改訂新版 世界大百科事典 「黒瀬川構造帯」の意味・わかりやすい解説
黒瀬川構造帯 (くろせがわこうぞうたい)
西南日本外帯の秩父帯にある構造帯で,九州から四国をへて紀伊半島にのびる。そこには周囲の上部古生界や中生界とは異質な種々の岩体が断層にかこまれ,レンズ状ないし帯状をなして1~2列,ときに数列にわたって断続的に露出している。この構造帯を特徴づける古期岩類は,酸性火山岩に富むシルル~デボン系(岡成(おかなろ)層群),角セン岩や片麻岩などの高度変成岩(寺野変成岩),圧砕花コウ岩類(三滝火成岩)および超塩基性岩であり,一部では低温高圧型変成岩も知られている。雲母の放射年代測定によると,高度変成岩は4億~4億5000万年前,圧砕花コウ岩類は2億5000万~4億3000万年前を示しており,これらは古生代中ごろから中生代にかけて島弧ないしは浅海底の高まりを構成していた陸塊の残片と考えられている。
執筆者:寺岡 易司
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