紀伊半島(読み)キイハントウ

デジタル大辞泉 「紀伊半島」の意味・読み・例文・類語

きい‐はんとう〔‐ハンタウ〕【紀伊半島】

近畿地方太平洋側に突き出た、日本最大の半島。紀ノ川櫛田くしだとを結ぶ中央構造線から南をいう。林業・木材加工業・水産業が盛ん。景勝地が多い。

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精選版 日本国語大辞典 「紀伊半島」の意味・読み・例文・類語

きい‐はんとう‥ハンタウ【紀伊半島】

  1. 近畿地方の南部、太平洋に突出する日本最大の半島。紀伊山地大部分を占め、東部に志摩半島がある。吉野熊野伊勢志摩の両国立公園があり、観光資源に富む。

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改訂新版 世界大百科事典 「紀伊半島」の意味・わかりやすい解説

紀伊半島 (きいはんとう)

本州の太平洋側,近畿地方の南部に突出する日本最大の半島。その範囲は通常,紀ノ川~高見山~櫛田川二見浦をつらねる地質学上の中央構造線以南とみなされ,和歌山,奈良,三重の3県にまたがる。西は紀伊水道,南東は熊野灘,東は伊勢湾によって囲まれる。

 地質的には西南日本外帯に属し,北から南へ三波川帯(三波川変成岩),秩父帯(中・古生層),四万十(しまんと)帯の日高川帯(白亜紀層)および四万十帯の音無(おとなし)-牟婁(むろ)帯(古第三紀層~新第三紀層最下部)とに区分される。四万十帯には新第三紀中新世の堆積岩類(田辺・熊野層群)や火成岩類(熊野酸性岩,大峰花コウ岩)も分布し,大峰花コウ岩の一部は秩父帯にのびる。紀ノ川流域には,中央構造線沿いに鮮新世~第四紀の地層が分布し,同層を切るいくつもの活断層がみられる。

 紀伊半島はその大半を紀伊山地によって占められ,山がちであり,中央部の大峰山脈には近畿地方最高峰の八剣山(仏経ヶ岳(ぶつきようがたけ)。1915m)のほか,1500~2000m級の山嶺がそびえる。ただ周辺部はしだいに高度を減じ,最後は段丘や隆起海食台を伴うリアス海岸となって終わる。平地には乏しく,わずかに紀ノ川筋の地溝平野や,櫛田川,宮川の下流にあたる南勢平野(伊勢平野南部),および海岸部の小平野をみるにすぎない。河川の多くは地層の帯状構造と関連し,西流(紀ノ川,吉野川,有田(ありだ)川,日高川など)あるいは東流(櫛田川,宮川など)するが,帯状構造と直交するものに,大峰山脈の両側を南流する十津川,北山川,およびそれらの下流にあたる熊野川がある。

 気候は,山地部を除くと黒潮の影響をうけるため温暖多雨で,特に大台ヶ原山から尾鷲(おわせ)にかけては年降水量は4000~5000mmを記録し,日本の最多雨地域をなす。森林が豊富で,沿岸部にはハマユウなどの亜熱帯植物が自生する。

 平地に乏しいため開発が遅れ,第2次大戦前は紀伊山地の杉(吉野杉),ヒノキの林業,太地,田辺,尾鷲,熊野,鳥羽などを拠点に営まれる沿岸部の漁業,南東端の志摩半島での真珠養殖業,紀ノ川流域や有田,御坊など南西部丘陵地で盛んなミカン栽培などに限られてきた。戦後は紀ノ川水系,熊野川水系などで電源・水資源開発のためのダム建設が進み,1960年代の高度成長期には和歌山,海南,下津などの紀伊水道沿岸部に製鉄,石油,化学などの臨海工業地帯も形成された。しかし反面,山間部の過疎化は著しく進んでいる。伊勢,熊野,高野山,大峰山などの聖地・霊場や,白浜,勝浦,湯ノ峰などの温泉,吉野などの史跡,大台ヶ原山,志摩などの風景美にめぐまれ,吉野熊野,伊勢志摩の二つの国立公園が含まれる。JR紀勢本線と国道42号線が沿岸を一周するほか,近年は内陸部に通じる国道168号線,311号線などの自動車道路も整備されてきた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紀伊半島」の意味・わかりやすい解説

紀伊半島
きいはんとう

近畿地方南部、太平洋に突出した半島。近畿地方のうち、紀の川と櫛田(くしだ)川を結ぶ中央構造線以南の部分で、紀伊山地によって構成される。東は伊勢(いせ)湾口部と熊野灘(なだ)に、西は紀伊水道に臨む。和歌山県全域と奈良、三重両県の南半部を含み、面積約9900平方キロメートル、約150万の人口を有する日本最大の半島である。地質的には構造線以南の西日本外帯に属し、北から古生層、中生層、第三紀層と配列する。したがって山脈、河川もほぼ東西方向をとるが、半島中央部は大峰(おおみね)山脈が南北に走り、台高(だいこう)山脈、紀和山脈が両側に並行している。全体として等高性の山地で、大台ヶ原山や高野山(こうやさん)などに山頂平坦(へいたん)面が残る隆起準平原である。この間を流れる河川も瀞八丁(どろはっちょう)に代表されるような先行性の曲流が多い。

 半島南部の熊野に代表されるように、山地は壮年期の深山で、これが海岸にまで迫り、紀北や志摩のリアス海岸や熊野灘沿岸のように海岸段丘が海面に切り立っている。したがって盆地や流域平野に乏しく、紀の川河口の和歌山平野、櫛田川河口の伊勢平野のほかは、日高川河口などに狭い平野がみられるにすぎない。延長1200キロメートルに及ぶ海岸線にも平野らしい平野はない。

 気候は黒潮の影響で温暖であり、大台ヶ原山が日本最多雨地帯であるように、主として南部は雨量が豊富で、吉野、熊野の豊かな山林地帯を育てた。人口はほとんど海岸部に集まる。鉄道は海岸をたどるJR紀勢本線と、志摩半島の参宮線のほか、紀の川河谷に沿う和歌山線だけで、半島縦断の旧国鉄の計画線が計画だけに終わったのもそのためである。一方、長い海岸線には200以上の漁港が並び、田辺、串本(くしもと)、勝浦、二木島(にきしま)、大王(だいおう)などは遠洋漁業の根拠地である。山と海の景勝地と温泉に恵まれ、伊勢、高野、熊野、吉野などの山岳宗教の地と結び、吉野熊野、伊勢志摩の国立公園、高野竜神(りゅうじん)国定公園がある。

[小池洋一]

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百科事典マイペディア 「紀伊半島」の意味・わかりやすい解説

紀伊半島【きいはんとう】

近畿地方南部に当たる日本最大の半島。一般には紀ノ川櫛田川を結ぶ中央構造線以南をさし,大部分は紀伊山地で,紀ノ川流域,伊勢平野,海岸の小平野に人口が集中する。海岸線は屈曲に富み良港が多い。海岸沿いに紀勢本線が通じる。
→関連項目大島(和歌山)紀伊水道熊野灘

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紀伊半島」の意味・わかりやすい解説

紀伊半島
きいはんとう

近畿地方南部,太平洋に突出する日本最大の半島。和歌山,奈良,三重の3県にまたがる。三重県の櫛田川と和歌山県の紀ノ川を結ぶ中央構造線以南をさす。面積約 9900km2。大部分は紀伊山地で,中央部を南北に走る大峰山脈が背骨をなす。和歌山平野,伊勢平野南部を除いては平野に乏しく,人口は海岸部に集中。海岸線は入江や屈曲が多く,良港に富み,鳥羽,尾鷲,勝浦,串本,田辺などの漁港が発達し,東部の志摩半島では真珠の養殖が行われる。温暖多雨で,特に南東部の山地は年間 4000mmをこす日本の多雨地域の1つで,林業・電源地帯を形成。古くから伊勢,吉野,熊野,高野山など信仰中心地が発達。温泉も多い。吉野熊野,伊勢志摩,瀬戸内海の3国立公園と高野龍神国定公園に属する。

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