日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼻閉」の意味・わかりやすい解説
鼻閉
びへい
俗にいう鼻づまりで、鼻孔(外鼻孔、後鼻孔)あるいは鼻腔(びくう)が狭くなって鼻による呼吸が障害された状態をいう。逆に、萎縮(いしゅく)性鼻炎のように鼻腔の内部が広くなりすぎても、鼻内の呼吸気流が異常となるため、鼻閉をおこすことがある。また、咽頭(いんとう)鼻部(鼻咽頭あるいは上咽頭ともいう)の狭窄(きょうさく)でも鼻閉がおこる。
鼻閉は、ほとんどすべての鼻や咽頭鼻部の疾患にみられる症状である。すなわち、形態異常、外傷、炎症、腫瘍(しゅよう)、異物などのほか、飲酒や点鼻薬の乱用、月経などで血管が拡張して鼻閉がおこることもある。閉鎖の程度は軽いものから完全に詰まるものまでいろいろある。一側性と両側性があり、ときには交代性に詰まることもある。鼻閉によって声は鼻声となる。新生児で両側性鼻閉があると、呼吸障害が強く、先天性後鼻孔閉鎖症では生命の維持が困難で、死亡する例が多い。幼児期に鼻閉が続くと、口呼吸が多くなるため、咽頭をはじめ気道の炎症をおこし、心身の発育も悪くなり、アデノイド顔貌(がんぼう)、歯列不正、不眠症、鳩胸(はとむね)、夜尿症、注意散漫症などとなる。
[河村正三]