花のノートルダム(読み)ハナノノートルダム

デジタル大辞泉 「花のノートルダム」の意味・読み・例文・類語

はなのノートルダム【花のノートルダム】

原題、〈フランスNotre-Dame-des-Fleursジュネによる小説女装男娼主人公とする詩的散文小説。服役中の1944年に書かれ、秘密出版。これをコクトーが絶賛し、サルトルらと請願運動をしたことで、著者は特赦を受けた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「花のノートルダム」の意味・わかりやすい解説

花のノートル・ダム
はなののーとるだむ
Notre-Dame-des-Fleurs

フランスの作家ジャン・ジュネの長編処女作。1948年刊。フレーヌ刑務所で服役中の44年に書き上げ、最初は秘密出版物として頒布されたのち、やがて一般に公刊された。女装の男娼(だんしょう)ディビーヌを中心に、男色者たちの性愛と心理を赤裸々に語りながら、ジュネ独特の壮麗な言語表現によって、卑猥(ひわい)も神聖の美に昇華させ、読者を衝撃した。同性愛の男子性行動をこれほど繊細優美に描写して清浄な詩的感動を与える作品は文学史上最初のものであった。小説というよりも詩的散文に近い異色作。

[曽根元吉]

『堀口大学訳『花のノートルダム』(新潮文庫)』

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世界大百科事典(旧版)内の花のノートルダムの言及

【ジュネ】より

…1942年,フレーヌ刑務所に服役中に書いた詩編《死刑囚Le condamné à mort》を出獄後パリで発表,J.コクトーの認めるところとなる。処女小説《花のノートル・ダム》(1944),第2作《薔薇の奇跡》(1946)は,共に犯罪者と男色家の世界を描くが,作者の想像力の異形性と汚辱と悪を美と聖性へと変容させるそのなまなましくも豪奢な散文によって,秘密出版とはいえ,一躍〈泥棒作家〉ジュネの名をパリの前衛文壇に知らしめた。ジューベにより劇作《女中たちLes bonnes》が初演された1947年は,また小説《葬儀》と《ブレストの乱暴者》が刊行された年だが,同時にジュネは窃盗常習犯として終身刑に処せられる。…

※「花のノートルダム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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