和歌山市(読み)ワカヤマシ

デジタル大辞泉 「和歌山市」の意味・読み・例文・類語

わかやま‐し【和歌山市】

和歌山

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日本歴史地名大系 「和歌山市」の解説

和歌山市
わかやまし

面積:二〇六・七三平方キロ

紀ノ川河口に形成された沖積平野を中心とし、北は和泉山脈南麓の山地、東は岩橋いわせ山塊とその支脈およびそれに囲まれた山間の小盆地、南は名草なくさ山や和歌浦わかのうら付近の小山塊周辺の山地および平地、西は紀淡海峡に面する海浜地帯および紀淡海峡に浮ぶともヶ島などの島嶼を含む。旧名草郡の大半と、旧海部あま郡・旧那賀なが郡の一部よりなる。北は大阪府泉南郡に、東は那賀郡岩出いわで町および貴志川きしがわ町に、南は海南市に接する。

縄文前期・中期の海進期には、今の六十谷むそた境原さかいばらを結ぶ線まで海岸線が入込み、それ以西の山塊は海中に浮ぶ小島嶼をなしていたが、縄文中期以降の海退現象と紀ノ川の堆積作用によってしだいに現在のような地形が形成された。しかし南部の和田わだ盆地では、和田川の堆積作用が微弱なため、縄文晩期頃まで入江のような状態を呈していたと推定される。

紀ノ川の河道も永らく不安定で、現在のような流路に落着いたのは明応年間(一四九二―一五〇一)といわれている(続風土記)。それまでの河道は何度も変遷があったらしいが、歴史時代初期の主要な河道は小豆島あずしま付近で二つに分れ、一つは現在の出水でみず川から和歌川を経て和歌浦湾に注ぎ、他の一つは土入どうにゆう川から水軒すいけん川を経て大浦おうら浜に流れ込んでいたと考えられる。この二つの河流に挟まれた現在の市街地中心部は、さらに幾つかの分流によって多くの三角洲に分断されていた。海浜部にはいその浦から大浦に至る大きな砂嘴吹上ふきあげ浜と、和歌浦から片男波かたおなみの小砂嘴が発達し、独特の景観をなしていた。この大きなほうの砂嘴を突破って紀ノ川がまっすぐ西流して海に注ぐようになったのが、前述の明応年間のことであった。

和歌山に都市が形成されたのは、天正一三年(一五八五)豊臣秀吉の紀州攻め以後のことである。秀吉は、岡山(現在の城山)に城を築き、その周辺にはじめて街区が形成され、城下町の起源となった。「和歌山」の呼称が初見するのも同じ頃である。

「和歌山」の地名は、「畠山記」(巻七)文正元年(一四六六)一〇月の両畠山の合戦の記事に「遊佐勘解由左衛門尉成加ハ和歌山ノ城ヲ固メ」とあるのが初見だが、これは和歌山城の前身である畠山氏の岡城をさすものと思われる。「畠山記」は近世初頭の成立といわれ、これをもって文正年間に和歌山城の呼称があったとすることはできないであろう。確実な文献としては、田辺の「万代記」天正一三年の記事に「三月より七月迄、若山大田陣にて、田辺騒動」とあるのや、同年七月二日付遠藤基信宛羽柴秀吉書状写(三好家文書)に「紀州和哥山ニ拙弟秀長置候、居城相拵、紀泉両国不残申付候」とみえるのが最も早い。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和歌山市」の意味・わかりやすい解説

和歌山〔市〕
わかやま

和歌山県北西部,紀伊水道に臨む中核市紀ノ川下流域に位置し,和歌山平野の西部を占める。県庁所在地。 1889年市制。 1955年西和佐村,岡崎村,1956年安原村,西山東村,東山東村,和佐村,西脇町,1958年有功村,直川村,川永村,小倉村,加太町,1959年山口村,紀伊村をそれぞれ編入。中心市街地は,天正 13 (1585) 年豊臣秀吉が虎伏山に若山城を築城,弟の羽柴秀長および浅野氏の時代から城下町として発展。元和5 (1619) 年徳川頼宣が入城,親藩 55万 5000石の城下町となってさらに繁栄した。水陸交通の便に恵まれ,紡績,染色,製材,木工,皮革などの工業が盛んになり,商業も発達。第2次世界大戦後,和歌山南湾岸に大貯木場や製材工場ができ,伝統的な建具,家具製造が盛んになったほか,紀ノ川河口付近に繊維,製鉄,石鹸,化学など多数の工場が立地し,和歌山北部臨海工業地域の中核を形成。周辺農村部では野菜栽培が行なわれる。和歌浦や加太浦は漁業基地で水産加工業が立地。平野周辺の山麓には縄文時代の貝塚があり,太田,黒田には弥生時代の住居跡が残るほか,紀伊風土記の丘の岩橋千塚古墳群 (国指定特別史跡) など先史遺跡が多い。第2次世界大戦で焼失した和歌山城 (若山城,国指定史跡) は 1958年に再建され,和歌山城西之丸庭園 (紅葉溪庭園) ,養翠園は国の名勝。南部には万葉の歌に詠まれた和歌浦をはじめ,新和歌浦,西国三十三所第2番札所の紀三井寺などの名所や景勝地がある。北西端の観光地友ヶ島を含む海岸地域一帯は瀬戸内海国立公園に属する。 JR紀勢本線,阪和線,和歌山線,南海電気鉄道本線,加太線,和歌山港線,和歌山電鐡貴志川線,国道 24号線,26号線,42号線が通じ,阪和自動車道のインターチェンジがある。面積 208.85km2。人口 35万6729(2020)。

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