紀伊水道(読み)きいすいどう

精選版 日本国語大辞典 「紀伊水道」の意味・読み・例文・類語

きい‐すいどう ‥スイダウ【紀伊水道】

紀伊半島の西岸と四国の東岸にはさまれた海域。太平洋瀬戸内海を結ぶ。西南日本の外帯山地の沈降により形成され、両海岸ともに相似のリアス式海岸をなしている。

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デジタル大辞泉 「紀伊水道」の意味・読み・例文・類語

きい‐すいどう〔‐スイダウ〕【紀伊水道】

紀伊半島四国との間にある海峡。南部は太平洋に続き、北部は瀬戸内海と通じる。

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日本歴史地名大系 「紀伊水道」の解説

紀伊水道
きいすいどう

四国東部と紀伊半島とに挟まれた海域で、豊後水道とともに瀬戸内海と太平洋を結ぶ水路をさす。一般には鳴門海峡淡路島紀淡きたん海峡を結ぶ線から、阿南市蒲生田がもうだ岬―同市伊島いしま―和歌山県日高ひだか美浜みはま御埼みさきを結ぶ線の内側、東西・南北とも約五〇キロの海域をさす。また海図では南口となる蒲生田岬から日ノ御埼一帯をさすが、海面漁業基本調査では瀬戸内海区に属する。

当水道の形成は中央構造線より南側の南西日本外帯山地の南北方向の地殻変動に伴う沈降によるものと考えられていて、その時期は更新世中期頃と推定されている。鳴門海峡や紀淡海峡主部のともしま水道付近の水深一〇〇メートル以上の海釜を除くと、海底は平坦地か緩傾斜地で、伊島―日ノ御埼間の八三メートルが最深所である。この南方の水深二〇〇メートル前後から紀伊海底谷が始まり、一〇〇〇メートル以上の室戸(南海)舟状海盆に続く。約二万年前にピークを迎えたビュルム氷期には海面は現在よりも約一〇〇メートル下がっていたと考えられ、当時の紀伊水道は陸化していて四国と本州は一体化していた。その後の地球温暖化によって海面が上昇し、現在の紀伊水道の海域が形成された。吉野川那賀なか川、和歌山県かわの河口付近は上流からの土砂供給と海砂を運ぶ沿岸流とにより、平滑な砂浜海岸(徳島市川内町地区の小松海岸から鳴門市里浦町に至る一帯、和歌山市の二里ヶ浜から水軒浜に至る砂浜など)となり、一部に砂嘴(小松島市和田島)や砂丘(那賀川町出島付近)をつくる。他方大規模河川に恵まれない阿南市たちばな湾や和歌山県の湯浅ゆあさ湾・由良ゆら湾付近はリアス海岸の原形を残し、変化に富んだ海岸線を示す。紀伊水道には太平洋から黒潮の分流が入り、日ノ御埼付近では時速二ノット(約三・七キロ)前後の流れである。しかし播磨灘に通じる鳴門海峡や大阪湾に通じる紀淡海峡では、潮位差のために定時的に急潮や渦潮が生じる。鳴門海峡の平時の流速は毎時一三―一五キロであるが、大潮時には一七―一八キロにもなり、鳴門海峡は「土佐日記」の時代から「あわのみと」の名で海上の難所として知られてきた。

徳島と阪神方面は紀伊水道を介して古くから結ばれており、紀伊水道沿岸には湊が設けられた。元暦二年(一一八五)二月、源義経一行は暴風で荒れるなかを摂津国渡辺わたなべ(現大阪市中央区)から船出し、一路四国をめざした(「吾妻鏡」同年二月一八日条、「源平盛衰記」巻四二など)。義経の四国渡海は讃岐屋島やしま(現香川県高松市)に拠点を移していた平家を攻撃するためであったが、義経は讃岐国に直接上陸せずに遠く離れた阿波の地に上陸した。

紀伊水道
きいすいどう

和歌山県北西海岸と徳島県東北海岸との間にある海域。「続風土記」は紀州の海上をすべて紀伊海というとしている。北縁淡路島の南に島があり、「大日本地名辞書」は「淡路島の南方は沼島灘にして今紀伊水道と称す」と記す。

紀伊水道は東西約四〇キロ、南北約五〇キロにわたり、南限は和歌山県御崎みさきと徳島県蒲生田かもだ(竈埼)と相対する最狭部で、この間東西約三〇キロである。水深は二〇―一〇〇メートル、南は太平洋に開き、北は淡路島とともヶ島(和歌山市)間の紀淡きたん海峡で大阪湾に、また淡路島西の鳴門海峡で瀬戸内海の播磨灘に通ずる。

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百科事典マイペディア 「紀伊水道」の意味・わかりやすい解説

紀伊水道【きいすいどう】

四国と紀伊半島の間の東西,南北とも約50kmの水域。日ノ御埼〜蒲生田(かもだ)岬で太平洋に,友ヶ島水道で大阪湾に,鳴門海峡播磨灘(はりまなだ)に通じる。西南日本外帯山地を横切る撓曲(とうきょく)運動で形成された。沿岸はリアス式海岸で,タイ,マグロ,カツオ,サバ,イワシなどが漁獲される。
→関連項目有田川大阪湾紀ノ川下津[町]瀬戸内海那賀川日置川日高[町]松茂[町]由良[町]吉野川(高知・徳島)和歌山[県]

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改訂新版 世界大百科事典 「紀伊水道」の意味・わかりやすい解説

紀伊水道 (きいすいどう)

紀伊半島西岸と四国東岸との間に通じる水域で,太平洋と瀬戸内海とをつなぐ。《水路志》ではその範囲を,南は紀伊半島側の日ノ御埼(ひのみさき)と四国側の蒲生田(かもだ)岬を結ぶ線とし,北は淡路島までとする。東西幅30~55km,南北長約45km。北端は淡路島の東西両側にある友ヶ島水道(紀淡海峡),鳴門海峡によって,それぞれ大阪湾,播磨灘に通じる。西南日本外帯山地を横ぎる撓曲(とうきよく)運動によって沈降し,形成された水道で,沿岸は出入りの多いリアス海岸をなし,湯浅湾(紀伊半島側),橘湾(四国側)などの湾入に富む。沿岸には和歌山,小松島(徳島県)などの港湾があり,東西を結ぶ舟運がみられるとともに,神戸・大阪両港などへ出入りする外洋船の通航もひんぱんにみられる。沿岸には漁村も多く,タイ,サバ,イワシ,アジなどの漁獲がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紀伊水道」の意味・わかりやすい解説

紀伊水道
きいすいどう

紀伊半島と四国の間の海域。東西約 30~55km,南北約 50kmで,西南日本外帯山地の撓曲運動による海水の浸入により形成された。南は和歌山県日ノ御埼と徳島県蒲生田岬で太平洋に通じ,北は友ヶ島水道によって大阪湾に,鳴門海峡によって播磨灘に通ずる。友ヶ島水道を通って大阪,神戸,堺の各港に出入りする大型船舶の交通量が多く,和歌山市と対岸の徳島県小松島市との間にはフェリーが運航。両岸はリアス海岸で景勝地が多く,友ヶ島水道,鳴門海峡付近は瀬戸内海国立公園に属する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紀伊水道」の意味・わかりやすい解説

紀伊水道
きいすいどう

和歌山県北西部と四国の徳島県東部の間の海域。東西約40キロメートル、南北約50キロメートルで、最狭部は和歌山県日ノ御埼(ひのみさき)と四国の蒲生田岬(かもだみさき)間の約30キロメートル。水深は20~100メートル。南部は太平洋に開き、北部は淡路(あわじ)島を挟んで紀淡(きたん)海峡で大阪湾と、また鳴門(なると)海峡によって播磨灘(はりまなだ)に通ずる。内海と外洋の魚族が回遊し漁業も盛んであるが沿岸の工業化も進み、船舶の航行が頻繁で本州側に和歌山下津港、四国側に徳島小松島港がある。

[小池洋一]

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