改訂新版 世界大百科事典 「内国通運会社」の意味・わかりやすい解説
内国通運会社 (ないこくつううんかいしゃ)
旧定飛脚仲間によって設立された陸運元会社を前身とし,明治前期を通じて政府の手厚い保護を受けた水陸運輸会社。1872年(明治5)東京に設立された陸運元会社は,ほぼ同じころ沿道各駅に設立された陸運会社の人馬を利用して,官営郵便物や一般貨物を輸送する運送請負業者であった。しかし,宿駅制度の廃止に際して政府が旧宿役人に半強制的に設立させた各駅の陸運会社は,通行の自由に逆行する場合が多く,私企業としての発展も期待できなかった。そのため政府は74年5月,陸運元会社を中心として全国の人馬継立網を再編することに決し,その準備完了をまって,内国通運会社(頭取吉村甚兵衛)への社名変更の認可(1875年2月)と各駅陸運会社の一斉解散(1875年5月)を行った。なお,同社はこれに先だって73年6月,布告第230号によって海運を除く運送請負業の事実上の独占権を付与されていたので,各駅陸運会社の解散後は,人馬継立業と運送請負業の双方で強大な実権を握ることになった。そして東海道の馬車輸送や利根川の汽船業にも進出した。しかし,このような初期独占的な実権は,輸送需要の急増した明治10年代に入るとかえって円滑な輸送の障害となり,79年5月には布告第230号が廃止された。また毎年同社に委託されてきた官営郵便の請負業務も,91年4月から競争入札制となり,落札に失敗した同社を危機に陥れた。その結果同社は,旧来の体質の改善に努めるとともに,各地の継立所を整理して人馬継立業から鉄道貨物の取扱業へと大きく転換し,93年6月,社名を内国通運株式会社と改称した。1937年準戦体制の産業合理化の一環として,日本通運に統合された。
執筆者:山本 弘文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報