和歌山県北部の平野。奈良県の吉野川が和歌山県に入って紀ノ川となるが,この流れに沿って東から西にらっぱ状に広がる県下最大の平野で,紀ノ川平野ともいう。広義の和歌山平野は橋本から下流部で面積は約193km2に及び,県下の平野面積の約50%を占める。ほぼ岩出市を境に,上流は河岸段丘や和泉山脈の南麓から連なる複合扇状地や洪積台地からなり,下流が狭義の和歌山平野で,紀ノ川による堆積平野をなし,河口付近には海岸砂丘が発達する。この地域には条里制の遺構がみられ,古代からすでに水田地帯としての開発が行われていたことを裏づけている。そして低湿地には江戸時代の開発地である新田がみられる。気候は瀬戸内式で,年降水量は1500mm内外と少ない。したがって上流部の水利の条件の悪い地域では,中世末期から近世にかけて多くの溜池や紀ノ川に井堰が設けられ,この平野の穀倉地帯化を促してきた。特に藤崎・小田両井堰は紀州流の築堤工法として有名である。
江戸時代には商品作物としてワタの栽培が盛んで,和歌山市を中心とする綿ネルや橋本市の旧高野口町のシール織などの繊維工業の由来を形成した。従来の穀倉地帯の水田はかなりミカン園に転換され,量的にも有田地方をしのぐようになった。果樹園地化は柿や桃にも及んでいる。下流部に近い平野農村のかつてのワタに代わる商品作物としてはタマネギ栽培をあげることができる。これは大阪の泉州地方から続くもので,水田の裏作として重要である。さらに堆積平野の部分は和歌山市の近郊農業地帯としてはんらん原や海岸砂丘がよく利用され,冬季の降霜日数も少ないため,野菜の露地栽培が可能である。結球ハクサイ,キャベツなどのほか,ダイコンは有名で,約35%が沢庵漬に加工される。1974年の阪和高速道路の開通などの道路網の整備により,阪神の近郊園芸地帯としての性格を帯びるようになってきた。
執筆者:重見 之雄
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和歌山県北西部、和歌山市域に含まれる県内第一の平野。和泉(いずみ)山脈南麓(ろく)を西流する紀ノ川が龍門(りゅうもん)山地との間に形成した流域平野全体を紀ノ川平野とよび、河口から約15キロメートルさかのぼった狭隘(きょうあい)部から下流の部分を一般に和歌山平野とよぶ。縄文時代には入り江であったが、海退と紀ノ川の堆積(たいせき)によって汀線(ていせん)がしだいに後退したと思われ、和歌川、土入(どにゅう)川、水軒(すいけん)川など流路の変遷を物語る旧河道や、名草(なぐさ)山、雑賀(さいか)山や和歌山城跡の岡山など、古くは海中の島であった丘陵が点在する。かつての汀線を示す南北に延びる三列の砂丘も、いまは市街地に取り囲まれたり、埋立てによって姿を没している。
[小池洋一]
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