日本大百科全書(ニッポニカ) 「FMNH₂」の意味・わかりやすい解説
FMNH₂
えふえむえぬえいちつー
補酵素フラビンモノヌクレオチドflavinmononucleotide(FMN)の還元型。NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、NADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、FADH2(還元型フラビンアデニンジヌクレオチド)と同様、代謝における活性担体(輸送体)の一つで電子を運ぶ。NADHの電子は、NADH-Q還元酵素を介して呼吸鎖に入る。NADH-Q還元酵素は34以上のポリペプチド鎖からなる巨大酵素(分子量88万)である。このプロトンポンプproton pump(酵素複合体)は、呼吸鎖を構成するほかの二つのプロトンポンプと同様、核とミトコンドリアの両方のゲノムによって符号化されている。最初の段階では、NADH-Q還元酵素に含まれるFMN補欠分子族(補欠分子団)にNADHが結合し、高いポテンシャルをもつ2個の電子を伝達して還元型のFMNH2をつくる。セミキノンラジカル中間体をつくることで、FMNは電子1個を受け取る、すなわち、FMNH2が電子1個を供給する。
[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]