改訂新版 世界大百科事典 「P&O汽船会社」の意味・わかりやすい解説
P&O汽船 [会社] (ピーアンドオーきせん)
イギリスの海運会社ペニンシュラ・アンド・オリエンタル汽船Peninsular and Oriental Steam Navigation会社の略称。イギリス海運最古の伝統を有し,世界海運に指導的地位を占めてきた世界最大手の船会社。海運業の生成発達の基盤となったイギリス貿易航路を地盤に,1822年にアンダーソンArthur AndersonとウィルコックスBrodie McGhie Willcoxの2人が創設した船会社を始まりとする。この船会社は35年にペニンシュラ汽船会社という社名でイングランドとスペイン間に汽船による定期運航サービスを開設し,4年後の39年には現在の社名でジブラルタルとアレキサンドリア間に定期航路を開設した。その後インド洋地域の定期航路の開設に向かい,43年のスエズ地峡を経由するカルカッタ航路を皮切りに次々に定期航路網を広げ,69年のスエズ運河開通でこれら東洋の定期航路網とヨーロッパの定期航路網とが直接接続されるに及んで,同社は世界最大手の定期船会社となった。19世紀末から20世紀初期にかけてイギリス海運界は吸収・合併を展開し,巨大な海運トラストの生成を見たが,同社もこの時期の50年間におびただしい数の船会社を吸収または買収し,一大グループを築いた。
第2次世界大戦で182隻138万7548総トンを喪失し,他のイギリス船社とともに壊滅的な被害を被ったが,戦後他のイギリス船社が伝統的な定期航路経営に固執し,戦後の革命的な海運市場構造の変革と技術革新への対応に遅れ,世界海運における相対的地位を低めていったなかで,同社は戦後の動向を敏感に感じとり,これに対応していった。とくに,戦後の世界海運のめざましい発展分野となったタンカーと専用船部門に積極的に進出したのが目だった。これによって今日のP&Oグループは,定期船,不定期船およびタンカーの全海運市場部門にわたってバランスのとれた経営構造を示している。また,他の産業分野にも積極的に進出し,幅広くかつ国際的に各種事業を兼営している。98年オランダの海運大手Royal Nedllandグループと貨物部門を統合し,世界最大の貨物船会社P&O Nedlloydが誕生した。売上高31億ポンド(2004年12月期)。
執筆者:織田 政夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報