改訂新版 世界大百科事典 「Y器官」の意味・わかりやすい解説
Y器官 (ワイきかん)
Y-organ
甲殻類の頭部または頭胸部にあって,対になっている外胚葉由来の腺性内分泌器官。直径約10μmの細胞が円錐状,レンズ状または葉状にかたまっている。最初ガーベM.Gabe(1953)によりカニ類でその存在が指摘され,エシャリエG.Échalier(1954-55)により脱皮を誘導するホルモンを分泌することが実験的に確認された。20-ヒドロキシエクジソン(かつてβ-エクジソンやクラストエクジソンとも呼ばれた)がホルモンとして抽出されている。昆虫の前胸腺と相同の器官と考えられているが,調節機構は異なり,Y器官からのホルモンの分泌がX器官・サイナス腺系より分泌される脱皮抑制ホルモン(MIH)により抑制されるのに対し,前胸腺からのホルモンは脳・側心体系からの脳ホルモン(PTTH)により分泌が促される。変態とY器官との関係は今のところまだ明らかではないが,Y器官からのホルモンは生殖腺の成熟に関係するともいわれている。
執筆者:片倉 康寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報