甲殻類の眼柄内,眼柄をもたない種では脳と複眼とを結ぶ神経の一部に存在する厚い皿状で乳青白色の蛍光を発する組織。腺とよばれているが,X器官や他の中枢神経に分布する神経分泌細胞の軸索の一部の末端が集まっていて,ここから神経分泌物が体液中に分泌されるので,独立した内分泌腺とはいえない。したがって,しばしばX器官-サイナス腺系として一括して扱われる。ザリガニのサイナス腺を電子顕微鏡で観察すると,少なくとも5種類の神経分泌顆粒(かりゆう)をもつ神経末端が区別される。これらの顆粒が,どこにある神経分泌細胞によってつくられ,それが体液中に分泌されたときにどのような生理作用を示すかは,まだよく分析されていない。サイナス腺から分泌されるホルモンは,色素胞刺激,脱皮抑制,卵黄形成の抑制,雌雄同体のエビでの性転換時の造雄腺の抑制,カルシウム,糖などの代謝促進など多くの作用が指摘されていて,一般に眼柄ホルモンと総称されることがある。
執筆者:片倉 康寿
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…神経分泌細胞は,その位置,含まれる顆粒(かりゆう)の状態,色素による染色性の特徴などから数種類区別される。これらの細胞の軸索の末端はサイナス腺に達し,ここからホルモンが体液中に分泌される。どの神経分泌細胞が,どのような生理作用をもつホルモンをつくるかについては,まだ明確にはなっていないが,眼柄,サイナス腺の除去や移植,また抽出物の注射などにより,色素胞刺激,卵黄形成の抑制,Y器官の抑制,水や無機イオンの代謝などの作用に関係していることが示されている。…
※「サイナス腺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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