改訂新版 世界大百科事典 「X器官」の意味・わかりやすい解説
X器官 (エックスきかん)
X organ
甲殻類の脳の前半部にみられる神経分泌細胞群の総称。ベロンチG.Bellonciによって1882年に存在が指摘され,機能が不明であることからX器官と名づけられた。種類によりその特徴に相違がある。エビ,カニのように眼柄をもっている種類では,眼柄内にのびている脳の一部にある。神経分泌細胞は,その位置,含まれる顆粒(かりゆう)の状態,色素による染色性の特徴などから数種類区別される。これらの細胞の軸索の末端はサイナス腺に達し,ここからホルモンが体液中に分泌される。どの神経分泌細胞が,どのような生理作用をもつホルモンをつくるかについては,まだ明確にはなっていないが,眼柄,サイナス腺の除去や移植,また抽出物の注射などにより,色素胞刺激,卵黄形成の抑制,Y器官の抑制,水や無機イオンの代謝などの作用に関係していることが示されている。X器官-サイナス腺系として脊椎動物の視床下部-脳下垂体系と比較される。
執筆者:片倉 康寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報