人々の消費行動に関して,しばしばみられる現象で,所得水準の低下に対して消費支出がそれほど低下しない現象をいう。ratchetとは〈歯どめする〉という意味である。
ある家計を考えたとき,各時点での消費支出はそのときの所得水準に依存すると考えるのが一般的であるが,さらに過去において最も高かった所得水準の影響を受けることがある。このときには,消費支出,より正確には所得のうち消費支出の占める比率が所得の変化率に比べ小さくなっていく。アメリカの経済学者デューゼンベリーJames Stemble Duesenberry(1918- )によって主張された考え方である。ラチェット効果は,人間にとって一度引き上げた消費水準を所得が下がったことによって引き下げることの難しさを表している。
執筆者:宇沢 弘文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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