共通善(読み)きょうつうぜん(その他表記)common good

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「共通善」の意味・わかりやすい解説

共通善
きょうつうぜん
common good

共同体の成員によって達成すべく合意された普遍的価値ないしは集合的目標をさすが,しばしば支配の正統性の根拠とされる政治思想史上の概念である。中世キリスト教世界では,カトリック信仰の確立とキリスト教的諸価値に基づく社会の安寧が共通善とみなされ,それに合致するかどうかの解釈権は教会のものであった。近代になると,中世的世界観の解体と自由な個人の出現によって,共通善の解釈に新たな問題が生じる。すなわち,それが政治社会全体の利益なのか社会の成員一人一人の利益の総体なのかという議論である。それは,同意を正統性や政治的服従の根拠とする解釈から共通善をへだてる議論でもある。ルソーによる一般意志と全体意志の区別は有名であるが,それはカントや功利主義者の議論を経て,今日においても政治哲学上の大きな論点である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

貨幣 (名目) 賃金額を消費者物価指数でデフレートしたもので,基準時に比較した賃金の購買力を計測するために用いられる。こうしたとらえ方は,名目賃金の上昇が物価の上昇によって実質的には減価させられている...

実質賃金の用語解説を読む