ビル火災(読み)ビルかさい

改訂新版 世界大百科事典 「ビル火災」の意味・わかりやすい解説

ビル火災 (ビルかさい)

経済の高度成長期におけるビル・ラッシュで人々は高層階や地下階で仕事をするのがごく普通のことになった。それまで1~2階の生活しか知らなかった人々が地上面からかけ離れた所に居住したり,活動するという変化をいやおうなく経験することになったわけである。地階や3階以上の階では水平方向に避難しても行止りになる。そこから,階段などの垂直方向の避難路を経て地上などの最終避難場所へたどりつかなければならない。このため垂直の避難路に煙が入らないようにすること(たて穴区画)がビルでは最も重要である。一般に煙の温度は外気温より高いので最上階から煙が詰まってくる。最も避難しにくい場所が最も早く危険になることになる。また,避難のために防火戸を開放すると煙も流入するから,階段室を煙から守るには前室を設け加圧するなどのくふうが必要である。このように,ビルには高度な防火技術が要求されるにもかかわらず,そこでの生活体験の浅いわれわれはまだビルの防火対策に習熟してはいない。その結果,これまで多くの惨事をひき起こしてきた。

 ビル防火のポイントは次の四つにまとめられる。(1)早期感知・警報 煙感知器等でいち早く火事を発見し在館者を避難させる必要がある。(2)初期消火 無人状態で出火しても自動的に消火できるスプリンクラー設備はビル防火に不可欠なものである。(3)たて穴区画 垂直方向の煙拡散を防止することが肝要で,詳細は前述のとおり。(4)防火管理 複雑で多様なビルであるほど火災の危険は高まるから,防火管理体制を整備し機動力をもたせることが重要である。とくに多くのテナント等が入居する雑居ビルでは共同で防火にあたる体制の構築が不可欠となっている。
火事 →防火
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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