一角・一廉(読み)ひとかど

精選版 日本国語大辞典 「一角・一廉」の意味・読み・例文・類語

ひと‐かど【一角・一廉】

[1] 〘名〙
① 一つの事柄。一つの方面。一つの分野。
※上杉家文書‐文明四年(1472)三月八日・雲照寺妙瑚書状「上意年年無未進御進納之時者、一角も御申候て、御恩にも可閣候」
② ひときわすぐれていること。ひときわ目立つこと。
※九州問答(1376)「又一かどある歌を有文と申と云説もあり」
③ (多く「ひとかどの」の形で用いる) 並以上に量の多いこと。相当であること。
※仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)一「一かどの勧賞にもあづからん」
④ (多く「ひとかどの」の形で用いる) 並すぐれていること。また、一人前であること。
※ゆく雲(1895)〈樋口一葉〉上「一ト廉(カド)学問を研かぬほどは」
[2] 〘副〙 相当に。相応に。人並みに。いっぱしに。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・毛吹草(1638)五「子日とて一かといはふ小松かな〈道二〉」
暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉一「君は一トかど悪者がって居るが」
[語誌](1)カドは才能の意。このカドは、中世には衰退傾向にあったらしく、ヒトカドなどの複合語の構成要素に見られるのみになっている。
(2)類義語にイッカドがあげられる。古く、ヒトカドとイッカドとどちらが優勢だったかは未詳だが、イッカドのほうが口語的であったと思われる。しかし、明治後期にはヒトカドの用例が多く見られるようになり、ヒトカドがイッカドにかわって一般語としての地位をえたものと推測される。→一廉(いっかど)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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