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暗夜行路 あんやこうろ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

暗夜行路
あんやこうろ

志賀直哉長編小説。 1921~37年発表。 16年余を費やして完成した作者唯一の長編。主人公時任 (ときとう) 謙作は,母と祖父との不義の子であるという出生の秘密を知り,深い苦悩を味わう。結婚によって脱却の道を得たと思ったのもつかのま,自分の旅行中に,妻が従兄と不義を犯す。こうしたぬきさしならない暗夜行路を経て,謙作は心境の安定を求める旅に出る。苦悩のはて伯耆の大山にこもり,ようやくすべてを許すことができる広々とした心境に達して終る。二重の忌むべき事件という虚構を通じて主人公のエゴを追及,その実感を尊重した生き方のなかに解決の道を探るという作者の自伝的要素が強い作品であり,倫理的自我意識の拡充を求めた白樺派文学の一つの頂点を示す傑作である。

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デジタル大辞泉の解説

あんやこうろ〔アンヤカウロ〕【暗夜行路】

志賀直哉の長編小説。大正10~昭和12年(1921~1937)まで断続的に発表。不義の子として生まれた時任謙作(ときとうけんさく)が、結婚後、妻の過失という不幸を背負いながら、心の調和と平安を見いだしていく過程を描く。

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百科事典マイペディアの解説

暗夜行路【あんやこうろ】

志賀直哉の長編小説。前編は1921年,後編は1922年―1937年断続的に《改造》に発表。自己の出生の秘密と妻の過失に苦しむ主人公時任(ときとう)謙作が精神の危機を克服するまでの内面的発展を描く。

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世界大百科事典 第2版の解説

あんやこうろ【暗夜行路】

志賀直哉の長編小説。1921‐37年(大正10‐昭和12)《改造》に断続連載。その構想,草稿は1912年ころからはじまる。四半世紀を費やし,執拗に完成させた志賀の唯一の長編。私小説を客観小説へ変形させていく苦渋にみちた曲折は近代小説のなかでも特筆に値する。主人公時任(ときとう)謙作の少年時代の追憶を描いた序詞は前編の伏線として有効。祖父と母との不義の子という出生の秘密を謙作は知らなかったが,何かわからぬ暗い重い日々を送り,放蕩にふける。

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大辞林 第三版の解説

あんやこうろ【暗夜行路】

小説。志賀直哉作。1921(大正10)~37年(昭和12)「改造」に発表。強烈な自我を有する時任謙作が、出生の秘密や妻の不義に苦悩し、自己と外界との葛藤かつとうにいらだちながら、やがて大自然(宇宙)の中に平安を得るまでの心理を描く。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

暗夜行路
あんやこうろ

志賀直哉(なおや)の長編小説。1921年(大正10)1月~1937年(昭和12)4月、『改造』に断続連載。前編は1922年新潮社刊。後編は1937年改造社の『志賀直哉全集』に収録。志賀没後の岩波書店版全集に大正初期に始まる構想時からの草稿を収めた。近代文学史のなかでは、その成立、完成にきわめて複雑な経緯をもつ傑作の一つ。主人公時任(ときとう)謙作1人まかり通る式の作品で、不義の子謙作という出生の秘密、さらに妻の不倫というショックに耐えつつ、自己のみの力で、肉体的、精神的彷徨(ほうこう)を重ねたすえ、自己回復に至る物語である。場面は東京、尾道(おのみち)、京都、山陰の大山(だいせん)と移る。主人公謙作の心理、好悪の感情が軸となり、祖父の妾(めかけ)のお栄、後編に登場する妻の直子が重要な役割を果たす。短編小説の連鎖のような形で展開、したがって構成の堅固さよりも1カット、1シーンの描写が抜群。尾道や大山における自然描写はとくに有名である。芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)もこの作品に敬服。美と倫理の一致をみごとに達成したこの作品に対して、同時代および後代の作家、評論家も盛んに論評、近代文学史上屈指の代表作としての誉れが高い。[紅野敏郎]
『『暗夜行路』(岩波文庫・角川文庫・講談社文庫・新潮文庫)』

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