宗論(仏教)(読み)しゅうろん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宗論(仏教)」の意味・わかりやすい解説

宗論(仏教)
しゅうろん

仏教で、教義の異なる宗派の間で、その優劣真偽などが論争されること。日本の仏教史上においては、平安時代に最澄(さいちょう)と徳一(とくいつ)との間になされた天台宗と法相(ほっそう)宗の論争をはじめ、1186年(文治2)に浄土宗の法然(ほうねん)(源空(げんくう))が天台宗の顕真(けんしん)の要請に応じて、真言宗の明遍(みょうへん)や法相宗の貞慶(じょうけい)らと論議をした大原問答などがあげられる。最澄と徳一の間では、すべての人が成仏(じょうぶつ)できるかどうかが論議された(三一権実(さんいつごんじつ)論争)。しかし、とりわけ多く宗論がなされたのは浄土宗と日蓮(にちれん)宗の間である。

 室町時代以降、両宗の間の宗論は盛んになり、1579年(天正7)の安土(あづち)宗論や、1608年(慶長13)の浄土宗の廓山(かくざん)らと日蓮宗の日経(にっけい)らとの宗論はその極にあるものである。安土宗論とは、安土(滋賀県近江八幡(おうみはちまん)市)の浄厳院(じょうごんいん)で、浄土宗からは霊誉玉念(れいよぎょくねん)らが、日蓮宗からは日珖(にっこう)らが出て行われたもので、念仏信仰と法華経(ほけきょう)のかかわりが論議された。

[由木義文]

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