( 1 )仏語としての本来の意味は①であり、文字通り仏になることであるが、何を以て成仏というかについては、宗派、経典によってまちまちである。概して、小乗は修行によってのみ成仏が可能(修得)とするのに対し、大乗は衆生には成仏の因があるから、必ずしも修行によらなくても成仏できる(性得)とするという違いがある。
( 2 )即身成仏を説く密教等の例外はあるものの、大抵の日本仏教においては、成仏するにはまず肉体の死が前提となっているために、室町期以降に②のように単に死ぬという意味でも用いられる下地ともなった。
仏(ほとけ)になること,〈さとり〉を開くこと。仏教の開祖釈迦(しやか)は,ブッダガヤーの菩提樹の下の金剛宝座で明の明星を見て仏陀(ぶつだ)Buddha,すなわち覚(さと)れるものとなった。〈さとり〉をさまたげる煩悩(ぼんのう)から解き放たれる意味で解脱(げだつ)といい,仏(覚れるもの)と成るという意味で成仏という。釈迦が入滅した後,仏弟子たちは成仏を求めて禅定(ぜんじよう)や止観(しかん)とよぶ宗教的瞑想につとめた。かくしてスリランカ,ミャンマー,タイなどに伝わる南方の上座部仏教Tera-vādaでは,涅槃(ねはん)(さとりの世界)を求めて解脱を目標とした。他方,大乗仏教Mahā-yānaがインド,中国,日本に伝わる間,禅定や止観が重んじられるとともに,それらの修行の階程をふむことを歴劫修行(りやくこうしゆぎよう)と否定し,〈信〉によってただちに生死の悩みから涅槃に昇化する即身成仏(そくしんじようぶつ)の思想が生まれた。日本仏教は各宗を通じてこの思潮に立ち,文学作品などで死を成仏と表現するのは,仏教信奉者が死を迎えると仏の命(いのち)に帰ると考えて,死者を成仏したものと理解したためであるとされる。
執筆者:渡辺 宝陽
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これが戒名というものの常識的な意味であるが,宗教的には人間としての人格を捨てて,仏となって永遠の仏格を得たことを表す。いわゆる成仏したしるしとして戒名で呼ぶのである。したがって戒名は,仏教とその成仏を表現できるような文字を選んで名付けられるものである。…
…灌頂はサンスクリットでアビシェーカabhiṣekaまたはアビシェーチャナabhiṣecanaといい,もとインドで帝王の即位や立太子のときに行われた儀式で,たとえば〈即位灌頂〉においては四大海の水を頭頂に注ぎ,それによって四海に至るまでの全世界の掌握を象徴したのである。これが仏教にもとり入れられ,大乗仏教では最後の修行を終えた菩薩が悟りを開いて仏になるとき,諸仏から智水の灌頂を受けて成仏するものとされた。仏は真理界の帝王(法王)であるから,成仏を法王の位に即(つ)くことになぞらえたのである。…
※「成仏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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