恨之介(読み)ウラミノスケ

デジタル大辞泉 「恨之介」の意味・読み・例文・類語

うらみのすけ【恨之介】

仮名草子。2巻。作者未詳。慶長14年(1609)以後の作。くずの恨之介と、近衛殿の養女雪の前との悲恋物語。近世初期の風俗風潮をよく反映した作品とされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「恨之介」の意味・わかりやすい解説

恨之介
うらみのすけ

仮名草子。2巻2冊。作者未詳。1612年(慶長17)ごろの成立。慶長(けいちょう)9年6月10日、清水(きよみず)観音の万灯会(まんとうえ)のおり、葛(くず)の恨之介は、関白秀次の家老木村常陸(ひたち)の忘れ形見である雪の前を見初め、仲立ちを通して恋文を送る。恋は成就して一度は契りを結ぶが、恨之介はその後の出会いがままならぬことに耐えかね、最後の文を残して焦がれ死ぬ。雪の前もまたその文を見て悲しみに耐えかねて死に、仲立ちの者たちも後を追って自害する、という筋。物語の展開は中世恋物語の常套(じょうとう)を出ているとはいえないが、当時の風俗や話題、時代の風潮を取り入れた新鮮さによって好評を博し、初期仮名草子の代表作の一つと称するに足る作品となっている。

[谷脇理史]

『前田金五郎校注『日本古典文学大系90 仮名草子集』(1965・岩波書店)』『野田寿雄校注『日本古典全書 仮名草子集 上』(1960・朝日新聞社)』

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