風俗(読み)フウゾク

デジタル大辞泉 「風俗」の意味・読み・例文・類語

ふう‐ぞく【風俗】

ある時代やある社会における、生活上の習わししきたり。風習。「明治の風俗」「性風俗
風俗店のこと。また、それに関係する事柄。「風俗産業」
身なり。服装。
「旦那らしき―の人」〈人・梅児誉美・初〉
身ぶりや態度。身のこなし。
「物和らかな―にとんと見とれて」〈伎・韓人漢文〉
ふぞく(風俗)
[類語](1世態世相世情流俗習俗風習手風てぶり社会現象風紀民俗土俗因習伝統

ふ‐ぞく【風俗】

風俗歌ふぞくうた」に同じ。
「歌は―。中にも、杉立てる門。神楽歌もをかし」〈・二八〇〉
ふうぞく(風俗)

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精選版 日本国語大辞典 「風俗」の意味・読み・例文・類語

ふう‐ぞく【風俗】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 生活上のならわし。しきたり。風習。
    1. [初出の実例]「尹一人。〈掌清風俗。弾奏内外非違〉」(出典:令義解(718)職員)
    2. [その他の文献]〔詩経‐大序〕
  3. みなり。よそおい。装ったすがた。風采(ふうさい)
    1. [初出の実例]「物を縫女奉公人を、おゐまといへり。さてはこしもとなどとわかれたれども風俗一躰なり」(出典:仮名草子・都風俗鑑(1681)二)
  4. 身のこなし。身ぶりや態度。
    1. [初出の実例]「ふうそくをつねに御たしなみ候はは」(出典:評判記・難野郎古たたみ(1666頃)橋本千勝)
    2. 「物和らかな風俗に、とんと見とれて」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)四)
  5. ふうぞくうた(風俗歌)
    1. [初出の実例]「此間吉野国栖三人奏風俗、一人着朝服、二人布衣烏帽、其礼甚専輙也」(出典:九暦‐九条殿記・五月節・天慶七年(944)五月五日)
    2. [その他の文献]〔史記‐楽書〕
  6. 和歌連歌俳諧などの様式。風体
    1. [初出の実例]「御代ゆたけき余慶に、此道甚さかむにをよび、その風俗まちまちたり」(出典:俳諧・談林十百韻(1675))
  7. ふうぞくえいぎょう(風俗営業)」の略。

ふ‐ぞく【風俗】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 諸国のならわし。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
  3. ふうぞく(風俗)
    1. [初出の実例]「歌はふぞく。中にも、杉立てる門」(出典:枕草子(10C終)二八〇)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「風俗」の意味・わかりやすい解説

風俗
ふぞく

奈良・平安時代から伝わる各地方の著名な歌謡を宮廷、貴族社会に取り入れ、編曲・改詞したもの。「ふうぞく」ともいう。催馬楽(さいばら)が畿内(きない)中心の歌謡であるのに対して、おもに東国地方の歌謡が集められており、宴遊の場で愛唱された。風俗とは、『詩経』国風(こくふう)に倣った命名ともいわれるが、「くにぶり」すなわち中央に対する地方特有の民謡を意味することばであったらしい。狭義には大嘗祭(おおにえのまつり)に際し、悠紀(ゆき)、主基(すき)に卜定(ぼくてい)された二国が奏上する歌舞を意味した。その歌を風俗歌(ふうぞくうた)、舞を風俗舞(ふうぞくまい)と称する。大嘗祭の辰(たつ)の日に悠紀国、巳(み)の日に主基国がそれぞれの地方の風俗歌を歌い、歌女が舞を奏した。これらは地方の国魂を奉ることを目的とする一種のタマフリの行事であったらしい。その起源は、675年(天武天皇4)2月、天武(てんむ)天皇が諸国の歌人・歌女を貢上せしめたところに求められるともいわれる。

 風俗の詞章は、『楽章類語鈔(しょう)』『承徳本古謡集』『古今集』などを中心に五十余首が知られている。「小筑波(おつくば)」「こよるぎ」「玉垂れ」「鴛鴦(おし)」「信太(しだ)の浦」「君を措(お)きて」「遠方(おちかた)」「小車(おぐるま)」「陸奥(みちのおく)」「甲斐(かい)」「常陸(ひたち)」「筑波山(つくばやま)」「月の面(おも)」「鸛(おおとり)」「難波振(なまぶり)」「荒田」「東路」「菅叢(すがむら)」「ちらちら」「我門(わがかど)」「伊勢人(いせびと)」「甲斐が嶺(ね)」「鳴り高し」「八少女(やおとめ)」「彼(か)の行(ゆ)く」など。風俗の歌形には、短歌形式に還元しうるものと不整形のものとがあり、前者が比較的新しい時代の成立らしい。平安末には貴族社会で歌われることも少なくなり、鎌倉初期に廃絶した。

[多田一臣]

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改訂新版 世界大百科事典 「風俗」の意味・わかりやすい解説

風俗 (ふぞく)

風俗歌ともいう。広義には地方民謡,狭義にはそのうちとくに平安貴族に愛好された数十曲を指す。その源流は,服属儀礼のひとつとして貢上された地方歌舞にもとめられるが,大嘗祭(だいじようさい)の次第が整えられる平安中後期には形式化し,《枕草子》に〈うたは風俗〉とあるように娯楽的に享受された。室町時代には滅んだが,近世の国学者は神楽(御神楽(みかぐら)),催馬楽(さいばら),東遊(あずまあそび)とともに〈四譜〉と称して重視した。《承徳本古謡集》(26曲),《文治本風俗古譜》(14曲),《楽章類語鈔》(26曲)など諸本の詞章は《古代歌謡集》(日本古典文学大系3)に集成され,林謙三(1899-1976)による復元の一部がレコード化されている(《天平・平安時代の音楽--古楽譜の解読による》,日本コロムビア)。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「風俗」の意味・わかりやすい解説

風俗
ふぞく

風俗歌ともいう。日本古代音楽の一つ。日本の各地方で流行した歌謡をいい,諸国の司らによって天皇の御前で演奏されたのをきっかけに,貴族の間でも歌われるようになった。そのなかにはのちの神楽歌に編入されたり,催馬楽 (さいばら) として採用されたものもある。現存最古の風俗歌譜である『風俗古譜』 (1186,多近久著。 1266,万歳麿写,多家蔵本) には鳴高,伊勢人,我門など 14首の墨譜を収めてある。

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普及版 字通 「風俗」の読み・字形・画数・意味

【風俗】ふうぞく

ならわし、くにぶり。

字通「風」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の風俗の言及

【芸能】より

…また《風土記》《万葉集》に見える歌垣・嬥歌(かがい)は,春の耕作始め,秋の収穫祝いの祭事として男女が山に登り,歌を応酬したもので,のちに中国の正月儀礼の踏歌(とうか)と習合して宮廷の芸能となる。 祭りの場の歌舞をいち早く芸能化したのは6,7世紀以来急速に国家体制を固めるようになった大和朝廷で,隼人(はやと),国栖(くず)など諸国の部族が服従のしるしに献(たてまつ)った歌舞が逐次宮廷の儀式に演ずる華麗な風俗舞(風俗(ふぞく))として定着するようになった。記紀の海幸・山幸(うみさちやまさち)説話に見えるウミサチヒコがヤマサチヒコの前で溺れるさまを演じたという所作などは,宮廷の祭儀の折に行った隼人族の風俗舞のすがたを伝えるものである。…

【民謡】より

…一般には明治以前からあった俚謡(りよう∥さとうた)などの語が用いられた。いずれも地方民間の,ごく通俗的でひなびた歌の意で,古代にいう風俗(ふぞく),近世にいう在郷歌,鄙歌(ひなうた)などとほぼ同義である。1914年,文部省文芸委員会が全国道府県から集めた郷土の歌を《俚謡集》と名づけて刊行したのもその意味で,レコードもその種の歌を俚謡と銘打って売り出すことが多かった。…

※「風俗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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