権現信仰(読み)ごんげんしんこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「権現信仰」の意味・わかりやすい解説

権現信仰
ごんげんしんこう

権現号を称する神々に対する信仰。権現とは、仏・菩薩(ぼさつ)が衆生(しゅじょう)を救済するため、仮(かり)の姿をとって現れることで、わが国では諸神と結び付き、諸神を仏・菩薩が仮に現れた姿と考え、これを権現号で称したのである。このような思想は本地垂迹(ほんじすいじゃく)説に基づくもので、平安中期以降、全国的に普及した。たとえば、日吉(ひよし)神社の神を山王(さんのう)権現、熊野(くまの)三山の神々を熊野三所権現、伊豆山(いずさん)神社の神を伊豆山権現(走湯山(そうとうさん)権現)、箱根神社の神を箱根権現などと称する類である。この信仰は中世、近世を通じて隆盛を極めたが、なかでも徳川家康の霊を祀(まつ)った東照(とうしょう)権現は有名で、権現様(ごんげんさま)といえば、もっぱら東照宮をさすほどになり、その建築も権現造と称され、近世の神社建築に多く用いられた。権現神を祀る堂を権現堂といって、その前に権現鳥居(とりい)(両部鳥居、四足鳥居)を建て、それを崇敬してきたが、1868年(慶応4)3月の神仏分離により権現号の使用は禁止された。しかし、この信仰がまったく消えたわけではなく、一般民衆のなかには、いまなお根強く生きている。

三橋 健]

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