… 劇場は,ドラマティックな効果のためのオーケストレーションの創意と実験の場であり,その効果はしばしば後に続く時代のシンフォニックなオーケストラの書法に吸収されていった。モーツァルトが《後宮からの誘拐》で用いたトルコ風の打楽器の用法(トライアングル,シンバル,大太鼓)は,ベートーベンによって2管編成のオーケストラに付加して用いられ,《第九交響曲》の終楽章ではすでに〈トルコ風の軍楽〉という意味をはなれて高潮した音楽的表現の山を築いている。その後ブラームスの交響曲にいたるまで,同様の打楽器の組合せは,ロマン派オーケストラの常備の編成となった。…
…
[オリエントへの好奇なまなざし]
ヨーロッパ人のオリエント(中近東,北アフリカ,ときにアジア全域をも含む)の風俗や事物に対する趣味と好奇心をいう。その萌芽的現象としては16世紀のベネチアのような,東方世界との接触の機会の多い場所で例がみられるが,おもに18世紀にはじまり19世紀の前半に全盛期を迎える。このことは,この現象が,文明の接触というよりむしろヨーロッパ文明自身が内包する問題――キリスト教への不信や物質文明による人間疎外など――に起因していると言えよう。…
…その後ジングシュピールはライプチヒからその他の都市にも広まり,ベルリンではJ.ベンダ,ウィーンではK.ディッタースドルフ,I.ウムラウフ,J.シェンク,モーツァルトなどが作品を書いた。このうちモーツァルトは《後宮からの誘拐》(1782)によってジングシュピールを芸術的に完成させ,その頂点を築いた。しかしこれは従来の単純な音楽劇としてのジングシュピールの域を越えて高度なものになっている。…
…母音の多いイタリア語で歌われるカンタービレなアリアを中心とするイタリア・オペラは,シュッツからバッハに至るプロテスタント教会音楽のなかで,ドイツ的なカンタータや受難曲に置き換えられ,叙唱的な語りと,コラール合唱のなかで真にドイツ語にふさわしい音楽へと作り変えられた。さらにモーツァルトやウェーバーは,ドイツ語の地の独白や対話を織り込んだジングシュピール《後宮からの誘拐》や,ドイツ・ロマン主義オペラ《魔弾の射手》を創造した。カンタービレな歌にのらないドイツ語の特性を生かそうとする方向は,ゴータの宮廷で活躍したチェコ人ベンダGeorg Benda(1722‐95)のメロドラマや,またシェーンベルクのシュプレヒシュティンメにも見られる。…
※「後宮からの誘拐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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