内科学 第10版 「アニキサス症」の解説
アニキサス症(線虫症)
成虫はイルカなど海棲哺乳類を終宿主とし胃内に寄生している.オキアミなどの甲殻類を中間宿主とし,その後サバやイカなどの多種の魚介類の体内に寄生している.これらをヒトが摂食することで感染が成立する.
摂食した幼虫がヒトの胃壁や腸壁に穿入し激しい腹痛を起こす.胃アニサキス症では通常は摂食後1~8時間に上腹部痛,悪心・嘔吐を発症する.腸アニサキス症は摂食後数時間から数日までに発症し,腹痛,膨満,腸管閉塞などを合併する.ときに消化管内壁を穿破し腹腔内に膿瘍や好酸球性肉芽腫を形成する場合がある. 胃アニサキス症では内視鏡での虫体(長径2~2.5 cm)の発見・摘出により診断と治療が同時に行われる.最終的には,ヒトは本来の宿主ではないため幼虫は数日で死亡するため対症療法でも十分である.
70℃以上の加温または−20℃以下を72時間以上の凍結処理で幼虫は死亡する.また幼虫のサイズは肉眼で見えるため,技術のあるすし職人・料理人は食材中から見つけ出すことができる.[立川夏夫]
■文献
Farid Z, Patwardhan VN, et al: Parasitism and anemia. Am J Clin Nutr, 22: 498-503, 1969.
Stolk WA, de Vlas SJ, et al: Anti-Wolbachia treatment for lymphatic filariasis. Lancet, 365: 2067, 2005.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報