オキアミ(読み)おきあみ(英語表記)krill

翻訳|krill

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキアミ」の意味・わかりやすい解説

オキアミ
おきあみ / 沖醤蝦
krill

節足動物門甲殻綱オキアミ目Euphausiaceaの総称。すべて海産で、世界で11属85種、日本近海からは9属45種が知られている。大部分は外洋性で、成体は一般に200メートル以深、500メートル以浅で遊泳生活をしているが、夜間には表層に浮上する日周鉛直移動を行う。種数は多くないが、動物プランクトンとしてきわめて重要な群で、魚類はもとよりヒゲクジラ類や海鳥類の好餌(こうじ)料となっている。また、近年では食用資源としても見直されてきている。

 体長は種によって異なるが、一般に1~5センチメートルで、形態はエビ類によく似ている。しかし、胸脚がすべて内外両枝からなること、胸脚の基部に樹枝状のえらが頭胸甲に覆われずに裸出していることにより区別される。一方、アミ類にもよく似ているが、頭胸甲が頭胸部を完全に覆っていること、尾肢(びし)の内枝に平衡胞がないこと、雌は哺育嚢(ほいくのう)をもたず、一般に卵を海中に放出してしまうこと、雄の第1、第2腹肢に交接器をもつことによって区別される。孵化(ふか)幼生はノープリウス幼生で、その後はカリプトピス幼生、フルキリア幼生、キルトピア幼生と変態して成体形になる。

 宮城県女川(おながわ)付近では、春に沿岸に浮上するツノナシオキアミEuphausia pacificaを対象とした漁が行われ、数万トンの漁獲がある。家畜や養殖魚類の餌料としての利用は伝統的であるが、近年ではむしろ釣りの餌(えさ)とされることが多い。ここ数年間もっとも注目されているのは南極海のナンキョクオキアミE. superbaである。ヒゲクジラ類の天然餌料として有名であるが、数億トンといわれる豊富な資源量のために人類の食用資源として期待され、一部はすでに実用化されている。オキアミ類としては体長5センチメートルに達する大形種であることと、濃密な群れをなすことによって開発が期待されてきた。日本の漁船による南極海でのオキアミ漁が行われているが、海洋環境・生物・資源量・生態調査に基づいた予防的漁獲制限量が定められている。釣りの餌としての評価も高い。

[武田正倫]

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