改訂新版 世界大百科事典 「アブダビー」の意味・わかりやすい解説
アブ・ダビー
Abū Zabī
アラブ首長国連邦の構成国。アブ・ザビー,アブ・ダビ,アブダビなどとも表記する。英語ではAbu Dhabi。アブ・ダビーとは〈カモシカの父〉の意味。面積は7万3060km2で連邦面積の80%,人口は約159万人(2003)で連邦人口の30%以上を占める。首長のザーイドは連邦発足以来の大統領で,息子のハリーファは皇太子。主都はアブ・ダビー市で本土と460mの橋で結ばれた小島にあり,連邦の首都でもある。豊富な石油収入を背景に都市機能の近代化が進み,中東でももっとも豊かな町の一つになっている。養殖真珠の普及以前は有数の天然真珠産地で,中心のダルマー島には数百隻のダウ船が集まり,採取者の数がペルシア湾岸全体の人口の5分の1にのぼったこともあった。またオアシスや港を結ぶ遊牧民の活動もさかんで,湾岸を占拠したポルトガル軍を一時はアフリカまで追い返すほどの軍事力もあった。首長国南西部のリワに住んでいたバニ・ヤース族が1761年にアブ・ダビー島に井戸を発見し,移住を開始したといわれている。彼らが今日の支配部族になっている。
最初の石油利権は1935年にイギリス人に与えられたが,油田発見は59年,輸出開始は63年であった。現在日本のアブダビ石油株式会社を含む外資系5社によって連邦の80%の原油が生産されているが,いずれの会社も過半数の株式を71年に設立されたアブ・ダビー国立石油会社(ADNOC)によって取得されている。アブ・ダビーは経済の多角化を進めており,石油関連,肥料,紙,飼料等への工業投資が進み,ルワイスには大規模な工業団地が建設されている。道路,住宅,電力,水道,学校,病院などの建設や農業開発も進んでいる。サーディーヤット島の試験農場は有名。同島にはまた96年アブ・ダビー自由貿易地域が建設された。
→アラブ首長国連邦
執筆者:冨岡 倍雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報