アミカ(英語表記)net-winged midge

改訂新版 世界大百科事典 「アミカ」の意味・わかりやすい解説

アミカ (網蚊)
net-winged midge

双翅目アミカ科Blepharoceridaeに属する昆虫の総称成虫ガガンボに似て体と脚は長く,翅は幅広い。翅には通常の翅脈のほかに網目状の折り目(しわ)がある。このしわは,さなぎ時代に翅が折りたたまれてできたものである。幼虫とさなぎは,山地渓流の流れの激しい場所で岩石上に固着して生活している。幼虫は背腹に扁平,7節よりなり,腹部第1~6節正中線上に円形吸盤をもつ。さなぎは楕円形で扁平。前胸背面に1対の呼吸盤をもち,その形態は種を区別する一つの特徴となる。世界に広く分布するが種数は少ない。日本からは7属24種の記録がある。北海道から九州まで分布するが,幼虫,さなぎは山地渓流に生息するので分布は局限する。冬季を幼虫,夏季を卵で過ごす冬型,反対に夏季に幼虫,冬季は卵で過ごす夏型,年間を通じて各齢期の幼虫が見られる周年型があり,ふつう年1回の発生である。卵は渓流の湿った岩上に産みつけられる。冬型では卵が秋に孵化(ふか)し,成虫は早春から初夏にかけて出現する。夏型では卵は春に孵化し,夏の間に成虫となる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミカ」の意味・わかりやすい解説

アミカ
あみか / 網蚊
net-winged midges

昆虫綱双翅(そうし)目カ群アミカ科Blepharoceridaeの総称。体と肢(あし)は細長い。はねは大きく、臀角(でんかく)がよく発達して突出している。翅脈のほかに擬脈または間脈とよぶ繊細な構造が広がり、光線のぐあいで網目のように光ってみえるのでこの名がある。雌雄とも合眼的で、複眼は細い横線、個眼が大きい上半部と、小さい下半部とに分かれている。頭頂には3個の単眼がある。触角は細く、9~15節。中胸背面の横線は中央で幅広く消失する。幼虫と蛹(さなぎ)はともに渓流の岩や川底に付着して生活し、体は扁平(へんぺい)で腹面にはよく発達した吸盤を備えるなど、特異な形態を示す。そのため、種類間の特徴がよく識別できるとの理由で分類には成虫よりも幼虫または蛹によるほうが容易とされる。成虫は渓流の付近で発見される。代表種のヤマトアミカBibiocephala japonica、スカシアミカParablephalocephala esakiiの両種のはねは透明で、美しい虹(にじ)様の光沢がある。またクロバアミカB. infuscataのはねは著しく煤(すす)色を帯びる。

[伊藤修四郎]

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