アメリカン・ニュー・シネマ(英語表記)American New Cinema

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

アメリカン・ニュー・シネマ
American New Cinema

1967年ころから登場し始めた新しいアメリカ映画をいうが,明確な定義はない。 A.ペンの『俺たちに明日はない』 (1967年) が公開されたとき,ジャーナリズムが「ニュー・シネマ」と呼んだのが始まりで,以降,その呼び名は,従来ハリウッド方式に逆らう一群の作品を指す総称となる。ほかに M.ニコルスの『卒業』 (67年) ,D.ホッパーの『イージー・ライダー』 (69年) ,J. R.ヒルの『明日に向かって撃て!』 (69年) ,S.ペキンパーの『ワイルド・パンチ』 (69年) など。 60年代は,映画を取り巻く内外の状況が急変していった時代で,社会がベトナム戦争や公民権運動に揺れ動き,若者既成の価値観に反発を強め,映画界では旧来のシステムが解体しかけていた。この背景の下,「ニュー・シネマ」が誕生したのである。反体制的な価値観や自由な話法,ロケーション中心主義などがそれらの特徴で,それまでにない斬新な表現は,アメリカ映画に新風を吹き込んだが,本質的にこれらの作品もまた,ハリウッド映画以外の何物でもなかった。ハリウッドは「ニュー・シネマ」が興行的に成功すると,そういう表現方法をも自己組織化し,さらに成長していくのである。この呼称は,日本ではよく使われるが,発祥地のアメリカではすでに死語に近いといえよう。

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