日本大百科全書(ニッポニカ) 「アヤメエビス」の意味・わかりやすい解説
アヤメエビス
あやめえびす / 菖蒲恵比寿
redcoat
red soldierfish
red squirrelfish
[学] Sargocentron rubrum
硬骨魚綱キンメダイ目イットウダイ科に属する海水魚。和名は体の背側面の帯状の色斑(しきはん)に由来すると思われる。三宅島(みやけじま)以南、沖縄県を経てインド洋、西太平洋、紅海、地中海東部などに広く分布する。体は側扁(そくへん)したタイ形で、硬くて粗雑な鱗(うろこ)で覆われる。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の下端の角部に強くて長い棘(とげ)があり、臀(しり)びれの軟条は7~10本であることでイットウダイ亜科に属し、アカマツカサ亜科と区別できる。吻(ふん)部の側面に水平に突出する突起があり、後鼻孔(こうびこう)の縁辺に棘がない。体側に6~7本の赤褐色~赤紫色の縦帯と、やや幅の広い銀白色の縦帯が交互に並び、そのうち背側面の1~2本は色が濃くなる。背びれと臀びれの軟条部の前縁と尾びれの上下の前縁が赤褐色で縁どられる。腹びれと臀びれの前縁は白い。腹びれの第2~4軟条の先端部は黒い。浅いサンゴ礁・岩礁域にすみ、おもに小形甲殻類を食べる。全長は32センチメートルほどになるものもあるが、普通は20センチメートルほどのものが多い。刺網(さしあみ)、延縄(はえなわ)、銛(もり)などでとり、食用にするが、色彩がきれいなので水族館で飼育される。
[尼岡邦夫 2016年8月19日]