日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラブ集団安全保障条約」の意味・わかりやすい解説
アラブ集団安全保障条約
あらぶしゅうだんあんぜんほしょうじょうやく
Joint Defence and Economic Cooperation Treaty
1950年6月に調印された地域共同防衛条約で、正式には「共同防衛・経済協力条約」。加盟国はアラブ連盟の原加盟国と同じエジプト、レバノン、サウジアラビア、シリア、イエメン、イラク、ヨルダンの7か国。条約の背景には、(1)1948~1949年のパレスチナ戦争での敗北、(2)激化する冷戦という2要因があり、アラブ連盟の統一強化とアラブ諸国の中立維持という理念を具体化したものであった。しかし、イラクは1955年バグダード条約機構に加盟して離脱、アラブ集団安保体制は発足当初から深刻な内部矛盾に直面していた。1956年のスエズ戦争時かろうじて共同歩調をとったが、その後も王制派と共和派、急進派と穏健派、さらには社会主義派とイスラム派など複雑な対立関係が解消されないというアラブ諸国の実情を反映して、1967年の六日戦争(第三次中東戦争)に際しても有効には機能しなかった。
[黒柳米司]