日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アリ・ババと四十人の盗賊
ありばばとよんじゅうにんのとうぞく
‘Alī Bābā ma‘a al-lusūs al-arba‘īn
フランスのA・ガランが18世紀初め『千一夜物語』のなかに入れてから世界的に広まった説話。しかし、この説話集のアラビア語原典中にはみえないので、出所は疑問視されていた。1908年ダンカン・マクドナルドがオックスフォード大学の図書館でその原典の写本を発見した。物語の出所はシリアらしいが、トルコ系の要素も混入したらしいという説もある。大筋(すじ)は、実直なアリ・ババが「開け、胡麻(ごま)」という呪文(じゅもん)の力で、40人の盗賊団が宝物を隠した洞窟(どうくつ)に入り、巨富を得る。そのため盗賊たちにねらわれるが、女奴隷の機知と勇気により救われる。呪文のこと以外は現実的な筋の運びになっている。
[前嶋信次]