改訂新版 世界大百科事典 「アルゴリス」の意味・わかりやすい解説
アルゴリス
Argolís
ギリシア本土の南部,ペロポネソス半島北東部に位置し,東西はサロニコス湾とアルカディア山地に,また南北はアルゴリコス湾とコリントス地方とに挟まれた,半島状の地方。現在は1県をなし,県都はナフプリオンNávplion(古名ナウプリア)。古代ギリシア史の最古期にあたるミュケナイ時代には,政治・文化の先進地帯として栄えた。ミュケナイやティリュンスの王城址は,それを示す代表的な遺跡である。ミュケナイ時代終焉ののち,この地方にはドリス人の支配する都市国家が多数成立したが,それらのなかでもっとも有力だったのがアルゴスArgosで,このポリスは,以後,南方の強国スパルタと敵対しつつ,ペロポネソス半島の一方の雄たるの地位を占めつづけた。前5世紀には,ミュケナイ,ティリュンス,ナウプリア,アシネなどアルゴス平野の諸市がアルゴスに併合されている。アルゴスの力のおよばないこの地方の東部には,エピダウロス,ヘルミオネ,トロイゼンなどの諸市があったが,なかでもエピダウロスは,医学の神アスクレピオスの神域と野外円形劇場の遺跡によって名高い。アルゴリス北部の都市クレオナイの領域内に含まれるネメアNemeaも,ゼウス神殿とその祭典に伴って催される体育競技とによって,古代ギリシア人の間で宗教上の一中心地としての役割を果たした。
執筆者:伊藤 貞夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報