日本大百科全書(ニッポニカ) 「エピダウロス」の意味・わかりやすい解説
エピダウロス
えぴだうろす
Epidauros
ギリシア南部、ペロポネソス半島アルゴリス地方東岸の古代都市。古来、医神アスクレピオス崇拝の聖地として知られていた。初めイオニア人の町であったがドーリス人の侵入によって追われた。その後ドーリス人ポリス(都市国家)としてのエピダウロスは、アイギナ、小アジア沿岸、近隣諸島に植民を行い、商業的繁栄を遂げた。しかしアイギナの興隆によって没落し始め、紀元前6世紀には商業活動はほとんどアイギナ人の手に移った。国制は、当初王政であったが、貴族政にとってかわられ、僭主(せんしゅ)プロクレスの追放後、寡頭政を維持し続けた。ペロポネソス戦争中、アルゴスの侵略を受けたが、これを撃退した。ローマ時代には、アスクレピオス神殿のある港湾都市にすぎなくなってしまった。なお、前4世紀に建てられた円形劇場などが残るエピダウロスの遺跡は1988年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[古川堅治]