ギリシアの古代都市。ペロポネソス半島、アルゴス平野の沿岸に位置するミケーネ時代の代表的遺跡の一つ。1999年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。新石器時代の土器片も出土するが、初期青銅器時代に直径28メートルほどの円型の建造物が構築された(前三千年紀なかば)。後期青銅器時代のミケーネ時代(前1600以降)に入って、まず、堅固な城壁で囲まれた王宮中枢部が築造され(上部城砦(じょうさい))、ついで、その北側に中庭を包摂する中部城砦が増設され、ミケーネ時代末期には、さらに北に向かって全長140メートルにも及ぶ長大な下部城砦がキクロペス様式の城壁で囲まれた。紀元前1200年ごろ破壊を被り、焼き払われた。線文字B粘土板文書が数片出土している。伝承ではミケーネ時代の王としてプロイトス、ペルセウス、エウリステウスの名が伝わり、ヘラクレスはこのエウリステウスに仕えたとされる。前700年ごろ、ミケーネ時代の王宮跡にヘラ神殿が建造され、ミケーネ時代の祭壇が再利用された。1962年に発見された碑文から、ティリンスは前7世紀後半にはポリス社会としての国制を整えていたことがわかる。ペルシア戦争をギリシア連合軍とともに戦ったのち、前420年ごろアルゴスによって滅ぼされた。
[馬場恵二]
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ギリシアのペロポネソス半島東北部,アルゴス平野のナウプリア湾に近いミケーネ文明の一中心地。前1400年頃壮大な王宮が営まれたが,約200年後破壊された。前480年頃は独立の小ポリスだったが,まもなくアルゴスが併合。
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