改訂新版 世界大百科事典 「アンタンダン」の意味・わかりやすい解説
アンタンダン
intendant
17~18世紀フランスの地方徴税区に配置された行政官。その起源は騎馬巡察審理官にさかのぼるとされるが,常設の行政官として各地方徴税区に任命され,集権化の役割を担うようになったのは1680年以降である。正式官職名〈警察・裁判・財務の監察官,国王委任官〉に示されているように,中央政府の指令を執行し,管区内の下級裁判,治安警察,税務の各機関の後見と調査報告の任務をもった。18世紀に入ると,貧民対策から施療院の監察,都市財政の後見から王立工房設営,道路網の建設などもその管轄下におかれ,啓蒙専制政治と初期行政国家の担い手となった。旧来の官職保有者と異なり,売官と役得利権を否定された近代的任命官僚であったが,パリの法服貴族層出身者が多く任命された。そのため,在地事情に通じた地方法曹家たちが補佐官subdéléguéに任用された。
→アンシャン・レジーム
執筆者:千葉 治男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報